2005年08月04日
教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書
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凄まじい編集力。誰かが書いておくべき本だったと心から思う。95年ごろからインターネットを使っている人であれば一家に一冊置いておくべき。懐かしくて泣きそうになる。
これは、日本のインターネットの草創期から現在までの歴史を、個人サイトやコミュニティ、アングラ文化などの、正史では語られない視点から徹底的に解説する本。その徹底ぶりが素晴らしい。何千何万の細かな事件を丁寧に日付ベースで年表化し、時代別に流れを長文の解説記事で紹介する。
具体的には、年表部は著者がまとめたWebページ
・教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史 Encyclopedia of Japanese Internet Culture
http://web.archive.org/web/20030801113739/http://blogdex.tripod.co.jp/encyclopedia/
のような内容である。上記のWebページは215キロバイトもあるが、書籍化に当たって数十倍も加筆しており、個人の著作であるとはちょっと信じがたいレベルだ。
ブログの源流である日本の日記サイトの変遷や、2ちゃんねるのような匿名掲示板成立までの小史、パソコン通信からインターネットへの移行、アングラサイトの興亡など、当時、ネットにハマっていた人なら、涙ぐみそうな細部の記録で満載である。
私にとって最初のネットコミュニティ体験は大学内のNetNewsだったと記憶している。端末の使い方について質問を投稿したら、「投稿する前にきちんと調べてから質問せよ」「投稿先をよく考えろ」と上級者の返事が飛んできて、ネットは怖いと感じたのが第一印象だった。そもそもわからないから投稿したのに。当時はインターネットはリテラシーのない人間はまったく歓迎されない雰囲気があったと思う。
メール末尾につける署名が3行を超えるとインターネット帯域の無駄であるとして上級者からやたら怒られる。メールの題名は日本語を使うな、英語で書け(文字化け回避と外国人配慮のため)。有名なホームページの作者に知り合いになりたくてメールを送ったら「お前など知らない。無差別に送っているだろう。迷惑メールを送るな」。ホームページの作成方法について質問すると「RFC****を読め」と一行の返答。すべて実話で、私のネット体験の最初は怒られてばかりだった。
私のような技術の入門者(特にUNIX方面)は当時「タコ」と呼ばれていた。そっけない対応をされるのが悔しくて、端末室にこもってサーバ技術を必死に覚えていた。ちゃんと相手をしてもらえるまでに1年くらいかかった気がする。
当時、上級者たちはこういう考え方をしていたようだ。
・Linux Japan Vol.5 我々は十分か?
http://www.nurs.or.jp/~ogochan/linux/5.html
「
netnewsやMLを見ていると、「○○のタコですが」と言う言葉を最初に言って、それこそ「タコ!」と罵倒したくなるような質問をする人がいる。どうもこの人は「Linuxはタコを大切にする」ということを誤解しているようである。また、タコを自称することにより、多少のこと(多少にはもちろん「多」も含まれている)も許容される言い訳(なぜかexcuseと英語で言われることが多いのはなぜだろう)になると思っているらしいし、それで非難をかわせるとさえ思っているようである。
」
おかげで、随分勉強になった。一種の修行制度みたいなものだったのか。今のネットコミュニティは2ちゃんねるでさえ、比較したら親切だと思う。時代の移り変わりを感じる。そうした時期のことがこの本にはいっぱい書かれている。懐かしい。
素晴らしい本であるが、メールマガジン、メーリングリスト方面については調べにくかったのか、若干、手薄も感じた。協力者を増やして、今後もネット上で増補改訂を続けて欲しいなあと切に思う貴重なデータベースである。
こうしてみるとコミュニティの歴史は無数のサイドストーリーが錯綜している。視点によって年表の楽しみ方も無数にあるのだろうなと思う。後半では今につながるブログの流行までが語られている。
そして、このブログもP315の年表に
「
2003年 09/04 ウェブログ「情報考学Passion For The Future」開設。
」
とちゃんと掲載されているのを見て驚いた。著者はこのサイトを訪問して開始年月日まで調べてくれたのかと思うと、作業の丁寧さに頭が下がる。インターネット草創期を経験しているユーザであれば、買って損はないというか、買わないと損な一冊。
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Posted by daiya at 2005年08月04日 23:59 | TrackBack