2005年07月28日

間合い上手 メンタルヘルスの心理学からこのエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーをはてなブックマークに追加


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・間合い上手 メンタルヘルスの心理学から
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■間合い=時間と距離と心理の近さ

この本の理論では、間合いには、

・時間的間合い
・距離的間合い
・心理的間合い

の3つがあり、相互に関与しあっているとされる。

距離的間合いはパーソナルスペースの理論、プロクセミクス(近接学)としてよく知られているが、この著者の理論はそれに距離と心理の近さを複合したものといえる。こうした間合いづくりに失敗すると間が悪い、決まりが悪い、バツが悪い状況になる。

わかりにくいのは心理的間合いだが、社会学者フレンチ、レイブンらの研究によるとこの間合いには6つの社会的勢力が影響しているという。

1 専門性パワー 
  送り手の知識量、受け手の認識による影響力。医師と患者。教師と生徒など。
2 準拠性パワー
  影響の送り手のようになりたいと思わせる力。教祖と信者、親と子など。
3 正統性パワー
  送り手が正当な権利として力を行使し、受け手が認める。上司と部下など。
4 強制性パワー
  服従しないと罰を受けると感じる。処分決定の教師と生徒、人事など。
5 報酬性パワー
  送り手が報酬を与えると受け手が認識している関係。ほめたり小遣いをやる。
6 情報性パワー
  コミュニケーションの内容が情報的価値を持つと認識された相互的関係

これらのパワーが心理に影響した結果、対人認知が形成される。6つの影響のブレンドで人の印象が決まるということだ。認知の仕組みとして、林文俊の「対人認知の基本3次元」が紹介されている。

1 個人的親しみやすさ
  あたたかさ、やさしさ、愛想のよさ、温厚性、明朗、魅力など
2 社会的望ましさ
  誠実性、道徳性、良心性、道徳性、理知性、堅実性、心細さなど
3 力本性(意思の強さ+活動性)
  外向性、社交性、積極性、自信の強さ、意欲性、大胆性、粘着性など

TPOに応じて3つの要素の重視される度合いは異なる。その場にふさわしい特徴や資質は何かを適切に判断し、6つの社会的影響力のバランスを取れる人、それを正しく受け取れる人が、間合いのよい人ということになる。

そこにはテクニックもある。たとえば若者の男女関係において「最初は友達からはじめましょう」は、いきなり恋愛関係を申し込んで断られる予期と心理的ダメージを回避するための間合い取りであると例が出ていた。

また非言語の要素は印象形成に大きな役割を果たしている。表情をうまく制御したり、正しく認知できることは、対人関係の良好さを得るに当たり、重要な能力であるらしい。グループで表情の読み取りテストを行うトレーニングが間合い上手への道として紹介されていた。

■もてない、続かない、結婚できない理由の研究

間合いが下手だと、変わった人、浮いた人、空気が読めない人、鈍感な人という印象を周囲に与えてしまう。それが端的に現れるのは恋愛関係だろう。この本にも多数の恋愛における間合いが、解説されている。

ある研究によると、長続きしない男女関係というのは、次のようなステップを踏んでしまうという。

アイデンティティの恋愛理論

1 相手からの賛美、賞賛を求めたい
2 相手からの評価が気になる
3 しばらくすると呑み込まれる不安を感じる
4 相手の挙動に目が離せなくなる
5 結果として交際が長続きしない

つまり、自分のことばかり考えているとうまくいかないということ。二人のことを考えないと長く続かないということで、芸能人と著名経営者のカップルが離婚するような例はこのパターンなのだろう。

「結婚できない男」も科学されている。心理学者富重健一が女性に結婚できない男性のイメージを尋ね、模式化したところ、、出会いにおいて「話しかけられない男」、恋愛において「親密になれない男」、結婚において「決められない男」が結婚できないという結果が出たそうだ。

たまたま、さきほど聴いたばかりの曲に、こんな歌詞があった。

・四次元 Four Dimensions [MAXI]
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君には従順を 僕には優しさを
互いに演じさせて 疲れてしまうけど
それでも意味はあるかい と思う
今もほしがってくれるかい 僕を
」And I Love You / Mr.Children

これくらい二人関係をメタ認知できないといけないのかもしれない。

■自己効力感が間合い上手の秘訣

そして間合い上手の結論として、対人関係における自己効力感が大きな役割を果たしているのではないかという。こうふるまえばこうなるという結果予期と、そういう関係を作る能力があると信じる効力予期の二つが自己効力感といえる。

心理学者バンデューラによると自己効力感の源は次の4つ。

1 直接的経験による達成
  実際にやってみて学ぶ
2 代理的経験
  他者の経験から学ぶ
3 言語による説得
  ほめることでやる気、できる気にさせる
4 生理的・情緒的喚起
  緊張をほぐす、など

自己効力感の低い人は間合い作りに失敗するとすぐ諦めてしまう。逆に間合いが上手な人というのは、対人関係に自信を持っていて、経験から学んだ調整技術を使いこなせる人だということ。巻末には多数の調整技術の訓練法が示されていて、どれも面白そうなので試してみたくなった。

日本の場合、同質性の高い集団であるから、間合いの微妙なズレに敏感になる傾向があると思う。皆が人間関係を重視すればするほど、一層小さなズレが意識され、「自己コントロールの檻」に囚われてしまう。もっとズレが価値になるような多様性と重層性のある社会こそ、幸福な社会なのではないかなあと思う。

・自己コントロールの檻―感情マネジメント社会の現実
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001129.html

・人と人との快適距離―パーソナル・スペースとは何か
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001278.html

・マンガ・心理分析
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002605.html


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Posted by daiya at 2005年07月28日 23:59 | TrackBack このエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーをはてなブックマークに追加
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