2005年07月11日
タイムマシンをつくろう!
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タイムマシンの作り方を物理学者が本気で考えた本。
時間旅行が可能であることは疑いないらしい。1971年に精密な原子時計を飛行機に乗せて世界を一周させ、地上に置いた同一の時計と進み具合を比べる実験が行われた。飛行機に乗せた原子時計は明らかに進み方が遅く、地上の時計と比べて59ナノ秒だけ遅れていた。
毎秒30万キロメートルの光速で移動する宇宙船に乗っていると人は年をとらないと空想小説で書かれているが、この現実の原子時計の遅れは、それよりはかなり遅い飛行機の速さによる小さなタイムワープの結果である。
59ナノ秒は理論値通りであったそうだ。光速の半分で時間は13%遅くなり、光速の99%で7倍も遅くなる。もちろん、現在は人間を光速に近づける技術はないし、できたとしても人が生きていることができない。
そこで、この本では、光速移動を使うのではなく、時空を捻じ曲げるワームホールを利用する案を提案する。
この本のタイムマシンの作り方は以下の通り。
1 10兆度の超高温状態をつくる
2 超高温の塊を圧縮、さらに過熱すると小さなワームホールができる
3 できた微小ワームホールを拡大する
4 ワームホールの出口と入り口の間に時間差をつくる
映画のようにタイムマシンという機械装置を作るわけではなく、ブラックホールを操作してふたつの時間とつながった奇妙な時空を作るわけだ。現在の科学技術ではまったく不可能だが、理論上は不可能ではないことを証明して見せようとするのがこの本の面白さ。
ただし、このタイムマシンではマシンが製造された時間より前に飛ぶことができない弱点はあるのだが...。
ワームホールは映画コンタクトに登場する。
・コンタクト 特別編
この映画もよかった。
最終章ではタイムトラベルのパラドクスに関する考察がある。
たとえば、過去にさかのぼって親を殺した場合はどうなるのか?という有名なパラドクス。これはそもそも親がこどもを産む前に死んでいれば、タイムトラベラーが存在できないので、殺すこともできない。ナンセンスな問題だとあっさり片付けられている。
何より不可解なのは情報の起源をめぐるものだと著者は面白い問題提起をする。ある教授が2005年にタイムマシンを作り、2010年に行って、未来の学会論文雑誌の中で優れた数学の定理をメモして、2005年に戻ったとする。そして2005年に優秀な学生にそのメモを渡して、論文雑誌に発表させたとする。すると、その定理はどこから現れたことになるのか?という問題である。誰も発明していない定理が存在してしまう不思議。
無論、こうしたパラドクスは宇宙の存在自体を危うくする可能性がある。科学者によっては宇宙はこうしたパラドクスが起きないように、あの手この手で障害を作り出すものだと定義していたりする。
結局、行きたい時間を設定してレバーをえいっと引くとびゅーんと飛んでいけるH.G.ウェルズのようなタイムマシンの話ではなかった。この旧式のアイデアは実際に作ると、地球は宇宙を刻々と移動しているわけで、飛んだ先が真空の宇宙空間だったという罠があると欠陥が指摘もされていた。
「H.G.ウェルズの小説を映画化。運命を変えるヒントを求め、80万年後の未来へと旅立った若き天才科学者の壮大な冒険を描いた、SF・アドベンチャー・ムービー。出演は「メメント」のガイ・ピアーズ、「ダイハード3」のジェレミー・アイアンズほか。 」
80万年後はちょっと寂しい未来だった(感想)
タイムとラベルの研究とは純粋な思考実験として物理の理論を洗練させることに意義があるという。そして同時に思考実験はいつか実際に検証できるときがくる。科学の進歩に必要な遊びなのだと結論されている。
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Posted by daiya at 2005年07月11日 23:59 | TrackBack