2005年06月21日
本当に女帝を認めてもいいのか
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もやもやがかなり氷解した本。
この本のタイトル「本当に女帝を認めてもいいのか」に対して「どうして認めてはいけないのか?」、その根拠が知りたいと思って読み始めた。歴史上、女性天皇は何人もいたし、象徴天皇制に移行し、男女の機会均等が常識の現代において、女性の天皇を認めないのはナンセンスではないか、と考えていた。慎重派が女性天皇を認めない根拠を知りたかった。
ところでそもそも前提を私は勘違いしていた。
現在の皇室典範では、今上天皇の後には皇太子が皇位につく。そして、次の代は皇太子にも秋篠宮にも男子がいないので、秋篠宮が皇太子になる。その次の代は秋篠宮家が主流となって皇位を継承していく。だから、その段階では皇位継承順位の第一位は眞子様であって、愛子様は第3位になる。眞子様、愛子様の順位を逆に考えていた人は結構いるのではないだろうか。おやおや、とまず思った。
そして保守系の慎重派が、眞子様、愛子様が天皇になること自体に反対しているわけではないことも意外だった。女性天皇が問題ではなくて、女系天皇が誕生することを主な問題にしているのである。眞子様のこどもが天皇になるということは、男系から女系への移行となる。
この男系から女系への移行が天皇制が始まって以来の125回の引継ぎの歴史上、一度もなかったことらしい。歴史上、8人10代の女性天皇はいたが、すべてが「男系の女子」で男系男子が幼少などの理由での中継ぎ役を務めていた。つまり、本人は女性でも男系であることが重要だったのだ。
さらに男子直系を守るために、男子がいない場合、庶系継承(側室の子ども)と傍系継承(男系での近親)という工夫を使って男系を厳守してきた歴史がある。傍系継承では時には女系を避け、10親等も離れたほとんど他人に継承した例もあったという。そこまでして男系にこだわってきたわけである。
共同通信の世論調査では、昭和50年には天皇は「男子に限る」が54.7%。平成13年には15.3%。「女子でもよい」は昭和50年に31.9%、平成13年に71.2%であるそうで、世論は女性天皇の登場を支持している。
だが、「百二十五回も一度の例外もなく同じことを繰り返してきた。しかもかなりの無理をしてまで。ということは、これはもう動かしてはならない原理と考えるべきではないのか。合理的な理由は分からないが、歴史上一貫してそうしてきたことの事実の積み重ねの重みを現代人は感じるべきではないか」
というのが著者の主張である。
科学的には、男子直系とは男性染色体(XY)、女性染色体(XX)のうち、Y染色体を受け継いでいく唯一の方法になっている。理論的には神武天皇や日本武尊や聖徳太子と同じY染色体を受け継いでいるはずである。
脈々と受け継がれてきた男子直系の皇統という名のY染色体は、オリンピックの聖火リレーみたいなものと考えることができそうだ。たくさんの人が大事に守ってアテネから運んできた努力の後、今、自分に手渡された聖火を、何かの理由があるからといって、ライターでつけなおしてよいのか、が問われているのかもしれない。
歴史は人が作るものなのだから、後世にきちんと説明できる理由と国民的なコンセンサスがあれば、長年の伝統を変えるときがきてもおかしくはないだろう。ただ、その議論の場である有識者会議のメンバーがこの問題の専門家といえないこと、欠席者もいたりして真面目に議論されていない節があることなどを著者は批判している。
・皇室典範に関する有識者会議
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kousitu/
顔ぶれや毎回の議論の内容が公開されていて読み応えあり。
また、今後男子直系を守るために一度廃止した宮家を復活させよなどの提言をしている。いまや少数保守派の著者の意見に賛同するかどうかはともかくとして、女性天皇問題の議論がデータも使って、うまくまとめられており論旨も明確である。面白い本。
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Posted by daiya at 2005年06月21日 23:59 | TrackBack
Y染色体については、全部で44本ある染色体のうち一本にこだわる意味はない、という意見を見たことがあります。
男系=万世一系論に染色体を持ち出すのは、自分としてはちょっと電波っぽいように感じますけどね。
著者自身は染色体論を援護射撃としての扱いで紹介してます、為念。
個人的には100代以上染色体シャッフルした後でも46本のうちの1本が preserve されてるのは貴重なことに思えます。その連なりを自分の世代で断ち切るのは不幸の手紙を止めるのと同じくらい勇気がいるなあ...
眞子様、愛子様もY染色体を持っていないと思いますが?
眞子様、愛子様はいいけどそのお子さんはダメということですね!
本当に天皇家って125回も「確実に」血を繋いできたのでしょうか?
継体天皇なんて、いかにもな名前の方もいらっしゃいますけど。
実は「つながっているに違いない」という思い込みというか、イメージが重要なのであって、男系でも女系でも「縁者」であれば実質的に問題ないのではないでしょうか。社会システムは染色体には影響されないと思います。
面白いな。
しかしここまでくると、権力や神格の継承というより、遺伝の織りなす伝統芸能といった趣が。
なんとなく滑稽さが滲んでくる。
女系否定派の主張に、しばしば「神武天皇以来の…」「日本武尊以来の…」といった言葉が入ってしまうせいで、かえって疑問をもたれてしまうことが多いように思います。
今の天皇や皇太子が持っているY染色体が、「神武天皇」なる人物のY染色体と同じかどうかは、実はどうでもいいのです。むしろ問題は、現在の歴史研究の成果からみても、少なくとも1500年以上にわたって(具体的には継体天皇以来)、天皇家には確実に同じY染色体が継承されてきたことなのです。
よく女系容認派の方々は、「Y染色体だけ受け継いでる遠い親戚より、愛子様・眞子様の遺伝子を多く受け継いだ直系子孫の方が、継承資格があるのでは?」といった主張をされます。しかし、こうした意見は、天皇家の系統というものを、せいぜい2,3世代、100年程度のレベルでしか考えない近視眼的な意見だと思います。
神武天皇などの実在・非実在はともかく、今の天皇や皇太子には、少なくとも1500年前の天皇と同じ遺伝子が確実に受け継がれているのであり、これを未来の天皇へ確実に伝えていく方法は、やはり男系天皇の存続しかないのです。
「継体天皇と同じY染色体を持つことに何の意味があるのか?」「遺伝的につながってなくても、とりあえず後継者さえ確保できればいいのでは?」といった意見もよく聞きます。しかし天皇家という王朝は、それ自体が一つの「文化遺産」であり、政治的実権のあった古代はもちろん、実権を失った中世・近世においてさえ、日本の文化・伝統と密接に結びついた存在でした。
また天皇は、国家元首(または国民統合の象徴)であると同時に、宗教的権威であるということも重要です。天皇は現在も日々さまざまな宗教儀式をこなしており、それらはいずれも、今の天皇が数百年・千数百年前の天皇の子孫であることを前提としています。
こうした点を無視して、未来の天皇家と千数百年前の天皇(2,3代前の天皇ではなく)との遺伝的つながりを断ってしまうことは、例えば「国宝や世界遺産なんて、レプリカでも残してオリジナルは廃棄した方が、保存も楽だし経済的でしょ?」といった意見と同じくらいの暴論に思えますが、いかがでしょうか。
Posted by: 女帝容認・女系否定派 at 2005年10月08日 23:40Y染色体の話って、竹内久美子ですよね・・
トの人の声が最近大きくなってきていると思います。
橋本さん頑張ってください。