2005年06月13日
ASTERIA 実践ガイド −マウスで楽々プログラミング
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ASTERIAは企業内の異種システムを上流で統合するEAI (Enterprise Application Integration) ツールの一種。会計システム、販売システム、生産管理システム、購買システム、社内イントラなどを連携させるプログラムを開発する。
・ASTERIA(アステリア)【データ連携・システム統合プラットフォーム】
http://www.infoteria.com/jp/product/asteria/index.jsp
ASTERIAの最大の特徴はこうしたEAIアプリケーションをアイコンを並べて線でつなぐビジュアルプログラミングによって短期間に開発できること。パワーポイントでシステム図を描く要領で、コンポーネントアイコンを並べてシステムの構成を作り、処理手順通りに線でつなげ、パラメータを設定するだけで、プログラミングが完了する。
あらかじめ、多様なシステムと連結するためのインタフェースや、出力フォーマット(RDB、XML、CSV、EXCELやPDFなどもある)が大量に準備されている。ASTERIAでは、設計すること=開発することであり、設計者はコーディングの高度な知識を必要としない。純粋にビジネスロジック部分の開発に集中できる。
最も便利なコンポーネントは「マッパー関数コンポーネント」と呼ばれるデータ変換機能。このコンポーネントでは左側の入力の項目に、任意の変換操作を行った後、右側の出力の任意のフィールドに差し込むことができる。こう書くと分かりにくいが、要はインプットとアウトプットの間のデータ処理をすべて記述できるわけだから、ほとんどのデータ処理プログラミングはこのマッパー上で作ることができる。
条件分岐や制御構造、サブフローや並行処理、例外処理もビジュアルで表現できる。システム構成と処理フローが図として残るから、膨大な仕様書は不要である。この図そのものがシステムの仕様になるのだから。
この本には試用版CDが付属していたので早速試してみた。ASTERIAはサーバとデザイナークライアントに分かれており、サーバはWebベースで管理することができる。クライアントはWindowsデスクトップアプリケーション。多少はルールを覚える必要があるが、CSVファイルに記述された顧客マスターデータから、特定の属性のお客さまリストを抽出して、メールを送るプログラム程度は30分もあれば完成してしまう。
大規模なEAI用途というよりは、むしろ、個人の定型業務の自動化に向いているようにも思った。単純な順次実行のバッチ処理ではなく、ある程度複雑な条件判断が必要なエージェントプログラムを、アイコンを線でつないでいくだけで手元で作ることができるのは、便利だ。
最終章にASTERIAの設計思想が開発者によって書かれているが、
「95点ルールと70点ルール」
「変わらないものから変わるものへ」
というお話がある。
世の中には、財務会計や生産管理のように間違いが許されない95点を求められるシステムと、うまくいかなかったら失敗から学んで次のフェイズで片付ければいい70点システムがあるという。一般にシステムの精密度は50点を70点にするのは簡単だが、80点を90点に、さらには100点に近づけていくには膨大なコストがかかる。すべてを銀行の基幹業務システム並みの完成度にすることは効率が悪い。
特にナレッジワーカーが日常使う情報系システムは、非定型的で変化要因が多い。95点のツールを完成させても、時代遅れのシステムでは成果が出せない。70点のシステムをすぐさま状況に応じて設計できることは大きなメリットになる。ASTERIAの活躍の場は、変化の速い、70点でも動くシステムが求められている場なのだと結論されている。
まったくその通りで、私の日常の情報処理も、まさにそうした70点ツールがいっぱい欲しい。今は暇を見つけてはPerlやPHPなどのスクリプト言語で、自分専用の自動化ツールを開発したりしている。だが、やりたいことに追いついていないし、情報のターゲットがしばしば変化してしまうので、やり直しが多い。
たとえば、一般の検索エンジンや、ECサイトのデータベース、ソーシャルネットワーク、ソーシャルブックマークなどのWebアプリケーションから情報を取得したいのだけれど、先方の仕様は良く変わる。一度ツールを作成しても数ヶ月で動かなくなってしまったりしている。作り直しはコードの読み直しになる。ただでさえその場しのぎのスパゲッティコードなので、再度、全貌を理解するのにも時間が掛かる。そのうち、メンテナンスをあきらめてしまう。引継ぎなど不可能だ。
ASTERIAのように図面設計すること=開発することになるツールであれば、修正も容易だ。ビジュアルプログラミングは、作ってみようかの心理ハードルも低い。まさに個人のナレッジワーカーにとって強力な味方になりそうだ。
ただし、ASTERIAの最大の欠点は価格だろう。販売代理店の情報を見ると300万円近くするようだ。現在はEAIツールとして、ある程度大規模な異種システムの上流統合の市場を対象としているらしいが、本当の需要は個人のナレッジワークにこそあると思った。
また、完成したアプリケーションをPerlなどのスクリプト言語にエクスポート(そしてインポート)する機能もあると、今までの開発スタイルと連続できてさらに便利になるだろう。これができればノンプログラマがプログラマと協働することが可能になる。
と、いろいろ感想を書いてみたけれど、ビジュアルプログラミングで情報業務系を簡単開発できるツールは、今まさに企業のナレッジワークの現場に特に求められていると思う。
・今日のイベントはどうでしたか?とアンケートメールを参加者に送り、サーバで結果を集計してEXCELファイルとしてイントラにアップロードし、担当者が開く
くらいのアプリが、必要なときにすぐ作れるASTERIAは便利である。こうした芸当を5人、10人がこなせるような会社であれば、導入の検討余地がありそう。
関連:
・ズバリ自動化 Waha! Transformer Personal
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003267.html
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Posted by daiya at 2005年06月13日 23:59 | TrackBack