2005年06月09日
「アトミック・カフェ」と「美しい夏 キリシマ」
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気になっていたDVD2枚を鑑賞
■マイケルムーアの師匠がプロパガンダ映像をコラージュした原爆ドキュメンタリ
大統領ジョージ・W・ブッシュの従兄弟で、マイケル・ムーアが師と仰ぐケヴィン・ラファティ監督作。原爆、反共にまつわる1940〜50年代のニュースや広報フィルムを通し、アメリカのプロパガンダ戦略を見せるラジカルなドキュメンタリーDVD。
冷戦当時の政府広報映画とニュース映像のリミックスでほぼ全編が構成されている異色のつくり。エノラ・ゲイ乗員の原爆投下作戦の独白、ビキニ環礁で島民に避難要請のため説明を行う米兵の記録映像、ネバダの実験場でキノコ雲に向かって進軍する訓練の模様など、歴史的に貴重な映像にまず目がひきつけられる。
そして、原爆開発と投下の正当性や、原爆実験参加の安全さを、国民に納得させるための政府が作った広報映像の数々。当時は大真面目に製作していたのだろうけれど、今、見ると風刺漫画のような世界。
たとえば、映像にはこんなシーンが出てくる。
「原爆が落ちても伏せれば大丈夫」 国民向けの緊急時対策の放送
「放射能は浴びてもたいした問題にはならない」 訓練中の兵士に教育
「爆心地から20キロも離れていれば大丈夫」 テレビ放送
「何度か実験を見たが原爆の爆発は美しいものだ」 原爆実験の従軍牧師
「」
ぜんぜん大丈夫じゃないのは今は誰もが知っている。
監督はこうした映像に一切、批判的なナレーションや解説を入れない。そうすることで逆に大本営発表の嘘の深さと、だましだまされた時代の滑稽さを浮き彫りにする。とにかく、おかしくて笑えるが、現代の私たちもまた何かだまされているのかもしれないと思うと怖くもある名作。
■黒木和雄の戦争レクイエム
この映画と同時に、黒木和雄監督の戦争レクイエム3部作で唯一見ていなかった「美しい夏 キリシマ」を見た。以前に紹介した「TOMORROW 明日」「父と暮らせば」の間に入る2作目である。
「
1945年、夏。満州から引き上げてきた中学3年の日高康男(柄本佑)は空襲のショックで病となり、祖父(原田芳雄)の住む霧島で療養生活を送っていた。敗戦の影が静かに忍び寄る8月、日高家をはじめ、周囲の人々の生き様も少しずつ変化していく中、日々罪悪感を募らせる康男は、空襲で爆死した沖縄出身の親友の妹に会いに行くが…。
」
これまた人間ドラマの中で時代を描いた見事な作品だった。原爆投下前後の宮崎県の田舎での出来事。生々しい原爆と戦争を直接描かない点で3作は共通する。黒木和雄は戦争を悪いこと、愚かなこと、というイデオロギー的な判断ではなく、それは、ただ悲しいことだから、やるべきじゃないと表現しているように思う。
・TOMORROW 明日
長崎に原爆が投下される前日から翌朝までの日常風景を綴った、井上光晴の小説「明日・1945年8月8日・長崎」を実写化した人間ドラマ。1945年8月8日、あるカップルの結婚式が行われようとしていたいつも通りの平和な日常があった。しかし、翌日の朝…。
・父と暮せば
「
井上ひさし原作の同名小説を日本映画界の巨匠、黒木和雄監督が映画化したドラマ。原爆から生き延びた娘と、被害に遭い幽霊となった父親のふたりの交流を暖かく描く。宮沢りえ、原田芳雄、浅野忠信ら、豪華俳優陣の出演も話題になった
」
原爆に対してまったく違うアプローチの2監督の作品。日本の立場と米国の立場の違いはあるけれど、悲しくて愚かだから、原爆も戦争やめとけ、のメッセージが強力に伝わってくる気がした。
関連記事:
・父と暮らせば
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002020.html
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Posted by daiya at 2005年06月09日 23:59 | TrackBack
こんにちは。
これと同じじゃないけど似たような米国の当時の宣伝放送を知っていたのでそのURLをはらせていただきます。
http://www.archive.org/details/DuckandC1951
本当に背筋がぞっとするものです。