2005年02月07日
テレビのからくり
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■30年間横ばいなテレビ接触時間
携帯やインターネットの出現でテレビの視聴時間は減ったと思っている人が多いが、実際には、この30年ほど視聴時間は横ばいというビデオリサーチの調査結果が紹介されている。もちろん、ビデオリサーチはテレビが多くに見られないと困る会社だから、割り引く部分はあるにしても、そんな気はしていた。この10年、私自身が横ばい派だからだ。
特にノートPCと無線LANを使い始めてからは、テレビをつけながら、パソコンを使えるようになった。そんな”ながら族”が増えているのではないか。この1年半くらいは視聴時間が一時的に減っているが、それはインターネットが理由ではなくて、こどもが生まれたからである。だが、こどもも1歳半になると、最近はテレビをみたがるようになって、次第に視聴時間は元に戻り始めている。
調査によると85%の視聴者が1日4時間もテレビに接触している。そんなメディアは他にない。層別に見ると、マーケティング上最も重要とされるM1層(女性、20−34歳)は3時間21分。M1層(男性、20−34歳)で2時間25分。一番良く見ているのはF3(50歳以上の女性)で6時間4分。お年寄りと女性とこどもが最もよく見ているようだ。働き盛りの男性である自分の世代は忙しくて見る時間が少ないようである。
テレビは今もメディアの王様で健在だが、人気番組や接触様式には、もちろん、変化がでてきているようだ。そうした統計データとその見方が前半で説明されており、テレビのからくりの前提理解となる。
■人気のバラエティと長寿番組の秘訣
今のテレビで人気があるのはバラエティで、著者はこれを「多様な芸能や情報をショー形式で見せる番組」と定義し、歴史をたどると(例は古いが)
・音楽バラエティ
紅白歌合戦、光子の窓、ロッテ歌のアルバム
・お笑いバラエティ
お笑い三人組、てなもんや三度傘、8時だヨ!全員集合、オレたちひょうきん族
・クイズバラエティ
ジェスチャー、私の秘密、スター千夜一夜、すばらしき仲間、アメリカ横断ウルトラクイズ
と3つの系譜があるという。
番組の立ち上げ経緯や裏話も多い。福留アナは「一番ヒマなアナウンサー」だったからウルトラ横断クイズの司会者に選ばれた、だとか、プロジェクトXは「もうネタがない。一定の質的レベルを保ちながら続けるのは難しい」と現場は打ち切りの提案を出しているが上層部判断で続いているだとか、裏側が分かって面白い。
長寿番組の基本は水戸黄門にあるらしい。勧善懲悪、無敵の印籠のような、視聴者の期待する分かりやすいパターンの中で、登場人物が仲の良い家族化している。そんな番組が、長寿の可能性が高いという。なるほど、確かにクイズ番組や音楽番組、お笑い番組でも、司会者と出演者がお決まりのパターンを演じる番組は息が長い。安心できる、良い意味のマンネリがお茶の間には求められているのだろう。
最近、笑えたニュースに長寿番組「はぐれ刑事純情派」が今期で打ち切りという記事があった。あまりに番組が長く続いて、出演者の年齢と番組内の役に齟齬が生じてしまったらしい。70歳の刑事の家に30代の娘たちが結婚もしないで同居しているのは、やはり一般的ではないということのようだ。
・SANSPO.COM グッバイ安浦刑事…藤田まこと主演「はぐれ刑事純情派」終了
http://www.sanspo.com/geino/top/gt200501/gt2005011907.html
「
終了の理由を、東京・六本木の同局で会見した早河洋常務取締役(61)は「18年経ち、(ドラマ設定の)年齢に限界を感じた」と説明。同番組では刑事ドラマに加え、刑事の私生活にも重点を置いてきた。だが、放送開始時に藤田の19歳の娘役だった女優、松岡由美が36歳に、14歳の娘役だった小川範子も31歳になり、リアルな家族の触れ合いを描くことが難しくなった。藤田も家族構成に限界を感じていたといい、同局を通じ「お茶の間で家族が揃って見るドラマ、その中で描かれる家族にウソがあってはいけない」とコメントした。
」
■NHK問題、各局の盛衰、制作の現場、IT時代のIT番組?
この本は番組の裏話だけでなく、今ちょうど表面化して話題になっているNHK問題を先取りしていたり、各局の興亡史、製作現場の日常など多様な視点から、今のテレビ業界を浮き彫りにする。本来、業界内の地域通貨に過ぎなかった視聴率が流通していることは最近も不正に絡んで話題になった。
全体的に驚くべきは現場のアナログ度の高さ。アニメ業界は最たるものだが、デジタル化の波から現場はすっかり取り残されてしまっている様相がうかがえる。無論、機材のデジタル化だとか、放送のデジタル化は進んでいるわけだが、番組を作り出す現場はアナログ発想、現場主義、徒弟制度、徹夜で突貫工事の日々のようだ。
今まではアナログ主義でよかったのかもしれない。だが、国民の7割がインターネットを使い、3分の1の世帯がブロードバンド接続が実現した今、テレビに物足りなさを感じている視聴者も少なくないはずだ。説明の抽象化、簡略化のし過ぎで何を言いたいのか、分からないIT解説だとか、誰も本当は使っていない用語、たとえば「基本ソフト」「ホームページ閲覧ソフト」「応用ソフト」。分からない人にこれで分かると思えない上に、分かる人にも分かりにくくなっている気がする。
特に日本の経済を支えると言われるはずのIT系の話題は、取材の突込み、情報量が足りない。「技術的なことを話しても視聴者は分からないから」という親切心も、やがて「テレビは遅れている」だけになってしまう可能性があるような気もする。そろそろIT業界の人間も本気で見たい番組も出てきてほしいなと思う。
・テレビの嘘を見破る
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002377.html
・放送禁止歌
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001449.html
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Posted by daiya at 2005年02月07日 23:59 | TrackBack