2004年11月01日
人類はなぜUFOと遭遇するのか
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面白い。
20世紀前半から最近までの膨大なUFO目撃事件の資料をベースに、スミソニアン協会が本当は何が起きていたのかを解明した本。
まずは米国空軍やCIAといった政府機関と民間の(かなり怪しい)UFO研究グループとの半世紀に渡る情報戦はなんであったのか。CIAもUFO騒動の初期には、原因不明の諸現象に対して真面目に取り組んでいたことが分かる。民間研究グループがしばしば槍玉にあげてきた情報の隠蔽工作もあながち嘘ではなかった。こんなCIAの正式文書(1952年)が引用されている。
「
2 前述した事実にもかかわらず、多くの報告が「説明不能」のままとされている。(惑星間飛行をしている異星人のものという説は完全には除外されていない)。この問題について、さらに長期的に注意をする必要がある。
3 主な対策の遂行とその権限などに関しては、航空技術情報センターと調整を行ったうえで、この問題に関するCIAの監視をさらに継続することを推奨する。CIAが関心を持っているという素振りを、マスコミや大衆には見せないよう、強く要請する。関心事であるということは、未だ「公にされていない事実」が、合衆国政府の手中に存在するという「確証」である、などと安易に受け取る人騒がせな傾向が、大衆にはあるからである。
」
そして、その後数十年に渡って、UFO情報を収集する部署が政府には存在していた。初期には高官にもUFOを異星人の乗り物やソ連の秘密兵器と疑っている人もいたようだ。だが、多数のUFO目撃事例を調べていくと次第に、大半は科学的に解明できる事柄か、虚偽の報告であり、当初警戒していたような敵国の脅威とは無関係であることが分かり始め、次第に部門は縮小されていく。やがてはやっかいもの扱いされ、二人くらいで資料整理をするレベルになっていく。まるでXファイルのモルダーとスカリーみたいである。
目撃例の中には数千人が数千機のUFOが空を飛び交うのを目撃した例もある。1949年の「ファーミントンの侵略」と呼ばれるこの事件は、実は気象観測用気球が大量に近くの基地から放出されていたことが数年後に分かったりする。これなど現場に立ち会っていたら宇宙人の襲来かと信じてしまうだろう。
アダムスキーら著名なUFO研究者たちの怪しい実態も明らかにされる。初期のUFO研究者たちは確信犯が多かったようだ。UFO信奉者たちの信じたいことに調子を合わせて機関紙購読者を増やしていく。彼らも会員ビジネスの一種であるから、熾烈な会員獲得競争の中、さまざまな話を捏造していく。そして1970年代になると著名なグループの倒産や著名研究者の実態暴露などに伴い、一度は異星人の訪問としてのUFOブームは終焉を迎える。
だが、UFO神話は形を変えてその後も続いていく。ロズウェル事件に象徴されるようなUFO墜落とコンタクトの報告だとか、目撃するだけだったUFOに乗り込んだり、誘拐されたり、ついには宇宙人とセックスしてきましたと証言するコンタクティの時代が幕を開ける。彼らの特徴は確信犯ではなくて、本当に信じていること。だが、証言内容を調べていくと、その時代のフィクションに強く影響されて見た夢であることが分かる。
やがて、異星人はもう社会に溶け込んでいるだとか、大統領は異星人と契約を結び、地下基地に数百万人を住まわせているだとか、いう話になっていく。近年のSFドラマのストーリーはまさにそんな感じだ。UFO目撃談の内容は社会を移す鏡なのだ。
社会の出来事とUFO目撃事件の数や内容は相関があるのだという。輪郭がはっきりしないようなあいまいな危機感が社会に蔓延している時期に目撃事件が増える。特に行く末が流動的になる大統領選挙の年に多いという事実がオットービリグという学者によって解明されている。
「
空飛ぶ円盤と異星人の神話は人類が自分の世界をどのように組み立てようとしているのか、という問題と関わっている。「丸い形をした異星人の宇宙船」という考え方は、世界についての希望のシンボルと見なすことも、恐怖のシンボルと見なすこともできるのだ。
」
というのが、この本の結論である。いたって真面目であるが、さまざまな事件のUFO報道のいいかげんさを綿密に検証して暴きだしており、大変読み応えのある本だった。子供の頃より、疑問に思っていた「あの事件は?」の真相が次々に明らかになるのも面白い。宇宙人がいないと言っているわけではなく、有名なUFO騒ぎは一部の人が意図的に作りこんだ、でっちあげだということを、著者は多くの人に伝えたいようだ。かなり、納得できた。
ただ、逆に政府機関は情報を組織的に隠蔽する可能性があることが立証されてしまった側面もある。実際問題、もし地球外生命体から密約オファーが大統領に持ち込まれた場合、政府はどう対応するのであろうか。ここに描かれた政府高官の動きから見ると、もしかすると一般には伏せられたままにされるかもしれない。私たちは、神話も政府もどちらも疑ってみる必要があるなあと思った。
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Posted by daiya at 2004年11月01日 23:59 | TrackBack