2004年08月04日
コンサルティングの悪魔―日本企業を食い荒らす騙しの手口
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元ボストン・コンサルティング・グループ東京支社のコンサルタントによる暴露本。舞台に日本がよく登場している。
コンサルティングの悪魔学 第8章 4より
「
方法論的に動くコンサルティング会社のセールス部門は、ビジネス・アナリストを訓練し、レッドスポットを、クライアントの最悪の恐れを確認し拡大するような形で診断させる。ビジネスアナリストは、クライアントが口に出す懸念を特に悪く見せるように派遣される。最大10人のチームを8から12週間使って、懸念の十分な証拠を収集し、必要なら創り出す。それはまた、容易に改善できるような問題でなければならず、後に現場担当チームの好成績の証拠として簡単に数値化できるものでなければならない。測定されるべき部分と問題の源との間の直接の関係は適当で構わない
」
著者が言うには、コンサルタントはクライアントの危機意識を過剰に拡大し、自分たちの問題解決が最大の評価と報酬につながるように、状況を操作する。リエンジニアリング、チェンジマネジメンドの名のもとに、変わらなくても良い部分まで改変し、その費用を請求する。競合に勝つためには、産業スパイもどきの情報工作活動や、担当者の私生活まで踏み込んで弱みを握り、常に相手に対して交渉優位を保つ。長時間の労働と精神疲労によるストレスは、高い報酬と待遇、会社費用のシャンパンとファーストクラスの優越感でやり過ごす。クライアントのカネを食いつぶす悪魔みたいな存在だとこの本には描かれている。
普段、大手コンサル出身の友人・知人に囲まれているので、この本について意見を聞くと、結構読んだ人が多く、感想は大抵「おもしろいですね」。肯定も否定もしない人が多い。少し考えてみた。
この本、ある意味では真実を語っているようにも思うのだけれど、こうした悪魔、「プロ」もしくは「ゴロ」的な意識はどの業界にもある。メーカーやサービス、メディアであっても、マッチポンプで需要と供給を操作して、次々に本当は要らないかもしれないものや、ベストクオリティでないものを売りつけ儲けている。
コンサルティングファームは、顧客の悪魔的ディールを手伝っているのと同時に、営利企業としての自社の悪魔的ディールを最大化しようとしている。だから、特別、悪魔度が高いように感じられる。ある段階(パートナー)になるとき、踏み絵を踏むかどうかで、その後の出世が決まるという。
結局、この悪魔は、市場経済の悪魔であり、競争の淘汰圧がある場所では宿命的に生まれてしまう存在なのだと思う。コンサルファームが悪いとは言えないはずだと思う。悪魔に魂を売り渡したら人間として終わりだと思うのだが、ゴーイングコンサーンとしての企業が良質のサービスを維持しようとすれば、悪魔的な発想をまるで持たないのもまた、愚者であると思う。
先日、私の大好きな本屋「青山ブックセンター」が店舗を閉鎖、倒産した。その後、再建と店舗再開の見込みがあると業界人から噂を聞いてほっとした。ちょうど再建のニュースが今日、流れている。噂は本当だった。
・Yahoo!ニュース - エンターテインメント - 共同通信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040802-00000202-kyodo-ent
「顧客を中心に店の存続を求める署名運動が行われるなど、“救済”を求める声が高まっていた。洋販では「店舗の入居しているビル所有者の合意を得て、なるべく早く店を再開したい」としている。」
青山ブックセンターは店舗つくりやサービスの面では、完璧な本屋だったと思う。ただ、倒産して店舗が継続できなくなったのは愚者だった。こういう良い企業には、顧客のために少しだけワルであってほしい。
この本は、小説形式だが途中に悪魔学の要約がある。
・業界でグルになりすますための儀礼と儀式
・クライアントはご注意/スパイ術の魅惑
・一流コンサルティング会社に(好条件で)採用されるための秘術
など、噂の真相的な情報が満載。興味本位では楽しめた。だが、こればかりやってたら普通、嫌になるだろう。著者はMITを卒業後、大手コンサルティング企業を転職して回りながらフルブライト留学をしたり、パートナーに上り詰めたりした超エリート。だが、悪魔学に嫌気が差したのか、現在はNASAで宇宙開発の研究者になっているらしい。
これからコンサルタントになろうという人、コンサルタントを使おうという人にとって、良い意味でも悪い意味でも勉強になる本かなと思った。面白かったけれど小説としてはB級。次は大手コンサルの美徳を描いた「コンサルティングの天使」とかあったらいいと思うのだが、誰か書ける人いるだろうか?。
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Posted by daiya at 2004年08月04日 23:59 | TrackBack
>こういう良い企業には、顧客のために少しだけワルであってほしい。
おっしゃってる気分はよくわかります。
>この悪魔は、市場経済の悪魔であり、競争の淘汰圧がある場所では宿命的に生まれてしまう存在なのだ
人間の「存在」自身に、突き詰めると100%は肯定しきれない
部分が残る、事と無縁ではないでしょうね。
宮沢賢治の「夜鷹の星」の世界の話。
よく思うのは、「生存のための収益『力』」と「成長のための収益『力』」とは違うのではないかと
ということです。
今の、日本企業、日本人に、あまりに、「生存のための収益『力』」に関する
スキル、リテラシーがなさ過ぎる、ことが、
様々なここ15年ほどの事象を引き起こし、議論に収拾が付かない原因ではないかと、常々考えています。
>次は大手コンサルの美徳を描いた「コンサルティングの天使」とかあったらいいと思うのだが、誰か書ける人いるだろうか?。
実は私のHPにてそのもののタイトルで書いてます(笑)
最近放置気味ですが、一度ご覧頂くとありがたく。アップ再開しようかと思ってます。
http://homepage3.nifty.com/cons/index.htm
Posted by: ごんすけ at 2004年08月19日 02:09