2004年05月05日
放送禁止歌
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興味本位で読み始めたら、深い本で引き込まれた。フリーのテレビディレクターが同名のドキュメンタリを制作する過程を綴ったベストセラー本。
赤い鳥「竹田の子守唄」、岡林信康「手紙」、泉谷しげる「戦争小唄」、高田渡「自衛隊に入ろう」。その他、多数のテレビで長く放送されてこなかった歌がある。
放送禁止歌というと、体制側が決めた禁止リストがあってテレビ局は、それを根拠に自粛しているのだと思っていた。そして、放送禁止の理由は、それらを放送すると一般視聴者や圧力団体からクレームの嵐になってしまうからなのだと想像していた。
著者も最初は放送禁止の根拠を探す。その過程で、実は、放送禁止歌のリストなど存在しておらず、あったのは民放連の作成した「要注意歌謡曲」というリストに過ぎないことが分かる。だが、このリストにはA級と呼ばれるような有名な放送禁止歌が漏れている。そして、このリストでさえも、十数年前に失効している。
放送禁止の根拠は、「この歌は危ないんじゃないかなあ」程度の、番組制作現場の、事なかれ主義によるものだということが判明する。クレームや圧力などなかったことも分かる。長い間、多くの制作者が放送禁止の意味や、根拠をよく知らなかっただけなのだ。知らずになんとなく放送を自粛してきたのである。
ちょっと愕然とする。途中に挟まれるデーブスペクターと著者の長いインタビュー。ここで日米の放送禁止や表現の自由への考え方の違いが浮き彫りにされる。例えば米国の放送禁止用語は5つ(FUCK,GOD DAMN,ASSHOLE,BITCH,SHIT)しかなくて後は現場の判断なのだが、日本には禁止用語が膨大にある。これは現場がリスクを負いたくないために増えてきたものであって、規制する主体がいるわけではない。この国には言論を統制しようとするものもいない代わりに、表現の自由を守ろうとするものもいない、ってことなのかなと思った。
インタビューにでてきたテレビマンの言葉。
「テレビはマスメディアとして成長する過程で、とにかく毒と見なされるものを少しずつ排除しながら角をどんどん丸くしてきた。僕はそう感じてます。娯楽としては間違った方向ではない。しかし表現としては取り返しのつかない道を歩んでしまったのかもしれない。」
「表現には必ず副作用があるんです。どんな言葉にも様々な人たちのいろんな思いが集積されています。気にし始めたらきりがない。絶対に誰も傷つかない表現などありえない。」
後半は部落差別問題と放送禁止用語について、竹田の子守唄のご当地を訪ねて、深くこの問題を掘り下げていく。歌手やテレビ局、部落解放同盟と当事者の生の声を丁寧に聞き取る。著者の真摯な姿勢に関係者も、率直な言葉を吐露している。この人は本物のジャーナリストだなと思った。名著。
・放送禁止歌(要注意歌謡曲)案内
http://www2.ttcn.ne.jp/~bookbox/kinsika.htm
放送禁止歌についての解説。ジャケット写真やコメント。
・マイケル・ムーア日本語公式ウェブサイト
http://www.michaelmoorejapan.com/
放送禁止を連想させる「ボウリング・フォー・コロンバイン 」の監督、マイケル・ムーア。最新作「華氏9・11度」でも、ちゃんともめてます。
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Posted by daiya at 2004年05月05日 23:59 | TrackBack
I think the "taboo words" for TV programs of the U.S. are like this,
shit, piss, fuck, cunt, cocksucker, motherfucker and tits
( cf. http://en.wikipedia.org/wiki/Taboo_word )
I belive not all of what Wikipedia says, but this is same as what I remember.. At least, if you see the TV, you can hear words like "GOD DAMN, ASSHOLE, BITCH and SHIT" ALL THE TIME. But paying program is different, and also the radio program is totally different from TV. Everybody can say the F word or similar insulting expression...
Posted by: hoga at 2004年05月09日 09:00そう言えば、以前総裁選に麻生総務相が立候補した時に
麻生さんが勝つとアメリカのメディアは非常に困るという
話を聞いたような気がする。
ASSHOLE総理大臣は、あまりいい感じではないですよね。