2004年04月03日
二十年後―くらしの未来図
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■現場主義の未来予測 先端製品の開発者に聞くアプローチ
20年後の未来にはどのような技術、製品が出現して、私たちの生活をどのように変えているかを予想する本。著者は、今日の時点で市場に出ている最新の製品の開発者に対してインタビューして回る。
観測テーマとして選ばれたのは、トイレ、バスルーム、洗濯機、ベッドルーム、防犯、エネルギー、ロボット、テレビ、生ゴミ、冷蔵庫、クルマ、キャッシュ、キッチン、ペット、葬式、の15分野。
著者は学者でもシンクタンクのリサーチャでもなく、社会問題や教育など幅広く取材をしてきたフリーライター。その自由な立場であることが、この本の面白さ。
この本の最終章「未来予測」では過去の政府や研究者が発表した20年前の未来予測がどれだけ当たってきたか、的中率を調べている。しかし、その結果は惨憺たるもの。つまり、詳しい専門家が予想したところで20年後の予想は当てにならない。
この本は、専門家に聞くのではなく、現場の開発者やマーケターに聞くことで最低限の根拠を築き、生活者である著者自身がその上で身近な視点で考えたことを書く、という戦略を取っている。自然と著者の筆は軽くなり、20年後だったら、こうなるんじゃないかな?、こんなものが欲しいな、という自由発想が多くなる。どうせ専門家でも当たらないのだから、未来予測は分かりやすく、面白い方がいい。この本はその点、成功している。
■市場ニーズと技術イノベーション
各分野の現状や未来予測を読んでいて思ったのは、家電や生活者向けサービスにおいては、
1 技術的には可能だが市場ニーズがないから実現されない製品・サービス
2 市場ニーズはあるが技術的に不可能だから実現されない製品・サービス
のパターンがあり、前者が圧倒的に多いということ。
開発者が「基本機能を備えた製品は存在していたが○年前では需要がなかった」と語るケースが多い。携帯電話もThe Internetも20年前に存在していたが、それらは決して今の「ケータイ」「インターネット」ではなかった。今のレベルまで生活と社会に浸透させたのは技術革新というよりは、それを必要とする生活者の需要の方だっただろう。
製品が普及する順番や連関も重要なポイントであるようだ。洋式便所が普及したからウォシュレットが人気だし、パソコンやプリンタが普及したからデジカメが人気なのである。先行する製品が、市場ニーズを大きく変容させてしまう。ひとつの分野でいきなり20年後を考えることは困難だ。
企業のマーケターは目の前の市場を見るのは得意だが、その2歩、3歩先を見ているわけではない。今売れる商品を考えているだけである。シンクタンクや学者は技術的に可能な未来のパターンは把握できても、目の前の市場がわかっていない。誰にとっても、未来予測が難しいのは、これらの事情があるからだろう。
・技術予測 文部科学省 科学技術政策研究所科学技術動向研究センター
http://www.nistep.go.jp/achiev/abs/jpn/rep071j/idx071j.html
リーフレット「未来への旅」が読みやすい
政府はこんな予測を出しているが、果たして、今度はどこまで当たるだろうか。
■先端製品をじっくり味わう
この本で紹介されている先端商品は、どこかで耳にしたけれど、詳細はよく知らなかった製品というものが多くて、勉強になる。
例えば、
・洗剤不要の洗濯機
http://www.sanyo.co.jp/koho/hypertext4/0106news-j/0622-1.html
消耗品の○○が不要というコンセプトはいいかもしれない。個人的にはインク不要のプリンタが欲しい。
・ゆっくり喋るラジオ
http://www.jvc-victor.co.jp/audio_w/product/radio/ra-bf1/
聴く時間は同じなのにゆっくり聞こえる秘密を内蔵。
・夢をコントロールするドリームボイジャー
http://www.shinchosha.co.jp/books/html/4-10-610053-3.html
このページはこの本の内容が少し読める。
このほか、割れないガラス、太陽熱発電、IHクッキングヒーターなど比較的地味な先端から、空飛ぶクルマ、パーソナルロボットまで出てくる製品は幅広い。それぞれ、どのくらい売れていて、メーカーは次にどうしようと考えているか、一般人に分かるように噛み砕いた説明がある。
関連情報:先端製品を見ながら未来生活を考えるサイト
・Popular science
http://www.popsci.com/popsci/
先端デジタル製品を中心にレビュー。同名の雑誌のサイト。日本語版もある。
・T3
http://www.t3.co.uk/
英国の最先端技術製品紹介の雑誌。携帯やクルマ、PCなどコンセプトモデルも含めてこれから市場に出回る製品が多数取り上げられる。T3はTommorow's Technology Todayの略で同名の雑誌がある。私は洋書屋で買っているが、大きなカラー写真中心で楽しめる。
・Extreme Computing
http://www.extremecomputing.com/
コンピュータ周りの先端製品がレビューされる。
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Posted by daiya at 2004年04月03日 23:59 | TrackBack