2004年03月17日
色と形の深層心理
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精神医学の教授による色と形の心理学の本。
■サークル・合コン・ゴレンジャー論
学生時代に私が作ったのか、誰かのネタだったのか忘れたが(私かもしれない...)合コンゴレンジャーという話題を、同性の飲み会でよくした。とてもオバカな内容なのだけれど今日はその話から。
大学のサークルに集まり、合コンを企画するメンバーには次のような類型がある
とする。
赤 リーダー。最も目立つが全体の盛り上がりに責任を負うため単独行動困難。
青 ナンバー2。色男の素養が必須。異性の集客力を持ち、自由に行動できる
黄 3枚目。お笑い、盛り上げ担当。身を捨て場に貢献する。
緑 特徴のないサブキャラで人数合わせ要員。
桃 異性グループとの連絡役で内通者。気のおけない女友達。
本人の努力によって、学年が上がるにつれてこのポジションは移動することができる。1年生は異性からみると総体的に目立ちにくいので、大抵は緑からキャリアを開始する。
上級生が下級生に最も期待しているのは、
緑→黄→赤
という路線であるが、下級生としては次は青を狙いたいと考えるものが多い。
青は集客力として組織に一定数必要であるが、他のメンバーにとってはその数が増えると自分の異性獲得チャンスが減るという、トレードオフが発生している。また、青単独では合コンを運営する力がないため、青だけでは生きることができず他に依存する。それゆえ、青には最低限のモラルハザード効果が働いている。
赤はリーダーの重圧と不自由さがあるため、目立つ割にメリットが少ない。仲間の信頼感が必要であるため、笑いによって場を盛り上げた実績が評価されて、
黄→赤
として成長するケースが多い。笑いによって上級生の目に留まりやすく、組織に対する貢献度も高く評価されるため、次世代リーダーになりやすい。
赤と桃の関係は微妙で、卒業後にくっついたりする可能性もある。これは、リーダーの孤独と内通者の孤独が互いを引き寄せあうからだと言われている。
本人にとっても周りにとっても、最もよくないのは、
緑→緑→緑
というパターンである。緑は人数合わせ及び青、黄の引き立て役として必要ではあるが、緑は代替可能な役割であり、希少性の価値が少ないから大事にはされない。なお、一度緑以外に変化した場合は緑に戻ることがない緑の可塑性原理がある。
最強は赤と青、次に青と黄をTPOに応じて切り替えられるメンバーである。こうしたメンバーを育てるのが我々の組織の目標なのだ。
という、とてもオバカなお話。
このベースとなる科学戦隊ゴレンジャーという子供向けテレビ番組の色分けは日本人の色の印象と性格の関係をうまく表現していると思う。いや、逆にゴレンジャーによって色の印象が決まってきた可能性さえ考えられる。赤はポジティブなリーダーの色。青はクールなサブリーダーの色。黄は明るい性格の三枚目というイメージを、特に私と同じ世代に、定着させたのはこのシリーズであると思う。
・スーパー戦隊百科
http://www.super-sentai.net/sentai/
ゴレンジャーに始まるシリーズの解説
■色と形の歴史と心理学分析
長いヨタ話はともかく、ここからが書評。
この本には「黄色は太陽の色であり生命の色」という章がある。子どもが絵を描く際に黄色で描くと言う記述がある。この記述については、あれ?っと思った。
子どもの頃から気になっている問題がある。「高く昇った太陽の色を何色で描くか」という問題である。私は子どもの頃、クレヨンで絵を描く際に太陽は必ず赤で描いた。諸外国の子どもは黄色が多いようである。実際、夕日か朝日でない限り、太陽が赤く見えることはない。日本の子どもが赤で描くのは、日章旗が赤だからという文化フィルターが原因なのではなかろうか。
この本では、歴史的に日本と世界で、それぞれの色がどのような意味を与えられてきたかという色の文化史と、心理学的にはどのように分析できるかという心理学的意味づけの主にふたつの視点で、紫、白、黄色、青、緑、赤、ピンク、オレンジ、灰色、黒の色が評論される。
紫は子どもが絵に使うと病的である分析されるが、文化史では高僧が身につける高貴の色でもあること。緑の多い日本には「若草色」「若菜色」「若苗色」「柳葉色」「松葉色」「萌黄色」などバリエーションが多いこと。情熱の色であると同時に、欧米ではキリストの血、死をも意味する赤など。色にまつわる解説がひたすら続く。後半では形が同じようにテーマとなる。どれも読み応えのある濃い内容である。
この本は、薄いが内容は重い本である。文体が文学的で、格調の高さ、著者の志の高さを読みながら感じていたのだが、あとがき、著者プロフィールをみて、納得した。まえがきの段階で著者が手術を受けた直後であることが書かれていたが、あとがきでは失明寸前で口述筆記でこの本を仕上げたことが述べられている。初版1986年。著者プロフィールにある作者没年は翌年の1987年である。覚悟か予感を感じながら、学者として精神医として、最後の仕事に挑む気迫が文体に読み取れる気がした。
この本はカラーコーディネートの本ではないので実用性は低いが、色と形に関して教養を深めて深く考察したい人におすすめの良書。
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Posted by daiya at 2004年03月17日 23:59 | TrackBack