2004年02月01日
犬は「びよ」と鳴いていた―日本語は擬音語・擬態語が面白い
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イヌが「わんわん」、ネコが「ニャーニャー」鳴く、擬音語。「バリバリの営業マン」「電子レンジでチンしておいて」という具合で使う擬態語。この本によると、英語では350種類しかないのに、日本語には1200以上あるとか、5倍も多いなどの調査結果が紹介されている。著者の調べによると、約半数は900年以上も永続する古い言葉であり、単なる流行語というわけではないらしい。
■この分野の日本の第一人者の書
この本の著者は、日本語における擬音語、擬態語の第一人者。辞書も出版している。
・暮らしのことば擬音・擬態語辞典
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062653303/
擬音・擬態語2000語を集大成した、最大・最高・最新の擬音・擬態語辞典
時代によって、擬音語、擬態語の表現は変る例もあるそうで、江戸時代のイヌの鳴き声は「びよびよ」だったという例が、タイトルにもなっている。古い文献をたどりながら、多数の実例を挙げて、擬音語、擬態語がどう発生し、変化し、消滅して行くかの考察が重ねられる。現代の用法や流行ももちろん、解説されており、チン、ピンポン、ブーなど現代では電子音の擬態語が多いことなど、なるほど、と感心する。
・著者山口仲美氏のサイト
http://www.toshima.ne.jp/~yosh8091/index.html
著者のサイトには多数の論文が公開されており、特に以下の文章は、この本のリードとしてぴったりだ。
・擬音語・擬態語の変化(前編)
http://www.toshima.ne.jp/~yosh8091/ronbun2.html
・擬音語・擬態語の変化(後編)
http://www.toshima.ne.jp/~yosh8091/ronbun3.html
上記のコラムを読んでさらに知りたいと思う人にこの本、絶対におすすめである。雑誌から集めた擬音語、擬態語のパターン分析などは特に興味深く、これから流行る言葉を作ろうとするマーケターにも参考になる情報が多く書かれている。
■私の身の回りの擬音語、擬態語
擬態語で不思議に思っていたのが「ギャフン」である。「ギャフンと言わせてやる」という表現は普通に使うが、実際に負けて「ギャフン」と言う人などいないわけで、どういうことなんだろうと思っていた。私だけではなかったようだ。
・ギャフンの由来をおしえて!
http://homepage2.nifty.com/osiete/s450.htm
なるほど調べてみるものですね。
日常生活の中にも新しい擬態語、擬音語は頻出する。
・マターリ(2ちゃんねる?)
・するっとお見通しだ(ドラマ TRICK)
・ざわわざわわ(森山良子楽曲:「さとうきび畑」)
・そうそう(夏川りみ楽曲:涙そうそう)
・感動して眼の幅涙ダー(友人の言、分かる気がするが...)
IT業界の職場でも独特の擬態語をよく使う。ざっと身の回りで使う例を思い出してみるだけでも、
「3Dでグリグリ動くやつを作ってくださいよ」(デザイナー)
「ゴリゴリ、プログラムのコードをゼロから書くのが好きで」(プログラマ)
「来週の原稿ですが、ここでサクっと書いちゃってもらえませんか?」(編集者)
など、日常的な言葉である。業界が違う人に前後の言葉を省略してしまうと、きっと伝わらないだろうが、逆に同じ業界内部では、この方が意味が活き活きと伝わるから不思議である。
■Webマーケティングと擬態語、擬音語
(Web)マーケティングの世界でもこの種の表現は、有効なはずだ。検証してみる。検索エンジンは、言葉の検索結果画面に広告枠を販売している。キーワードが広告枠なわけだ。
・Googleで「ピカピカ」で検索すると、
「
スーパークリーニングSet
しつこい汚れもこれ一本でOK
TV通販で人気の家庭用クリーナー
www.shopjapan.co.jp
」
というキーワード広告が見つかった。
「キラキラ」「ガンガン」だと、なぜか、
「
ドラゴンクエストV予約
古本市場で予約受付中!親子三代に
わたる感動の名作がPS2で復活
www.ubook.co.jp
」
という広告がでた。
「カサカサ」など大人気で、
「
温泉で人気かかとクリーム
かかとのカサカサをツルツルに
かかと専用の角質柔軟クリーム
www.concierge-beauty.com/
パラフィンパック
自宅で簡単に手足のうるおいパック
一度使うと手放せませんよー
www.kyoto-wel.com/shop/S81131/
ゲルアンドゲルクリーム
乾燥する季節のお肌には保湿一番
プレゼント有・全国送料・消費税無料
sankoinc.com/
」
と3つも広告が表示される。
Webマーケターも、擬音語、擬態語を意識している証拠だ。焼肉屋の「ジュージュー」のように、擬音語、擬態語には、シズル感の演出効果があると思う。トラフィックを呼び込むキーワードとして、意外にまだ活用例の少ない盲点だったりするかもしれない。
キーワード広告こそひとつも出ていないけれど、「ビンビン」などすごく男らしい(笑)検索結果が出てくる。この種の商品には「ビンビン」は売れるキーワード広告枠かもしれない。
Googleのキーワード広告販売サイトでは、各キーワードの金銭的価値が調べられる。キーワードの人気に応じて入札が行われるので、広告的価値の高いキーワード、つまり、儲かるキーワードほど、高い数字になるはずだ。やってみるとこうなった。(費用/日に注目)
なるほど。擬音語、擬態語にも、商業価値の高低の差はだいぶ、あるみたいだ。もうひとつの広告代理店Overtureのツールでも、一般ユーザがどのくらい頻繁に各キーワードで検索を行うかがわかる。結果は次のようになった。
・Overtureキーワードツール
http://inventory.overture.com/d/searchinventory/suggestion/?mkt=jp
53518 ガンガン
1353 キラキラ
693 ピカピカ
591 ビンビン
63 カサカサ
総合的に見ると、ビンビンはユーザにあまり検索されない言葉らしい。その代わり、広告枠は安く買うことができる。ある種の商品を売るのであれば、もしかすると少数だが商品購入率の高い特定の層をサイトへ呼び込める有効なキーワードだったりするかもしれない。
でも、まだ有効性は良く分からない。Webにおける擬態語、擬音語の研究はこれからの分野だろう。
もう一度この本を違う視点で読み直して、擬態語、擬音語で一儲け、たくらんでみよう、かな?。
関連URL:
・英語表現事典 微妙なニュアンスを英語で言うと?
http://home.alc.co.jp/db/owa/s_kaydic?ctg_in=4
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Posted by daiya at 2004年02月01日 23:59 | TrackBack
表題に関して蛇足なコメントですが、小説「狗神」坂東真砂子で、イヌガミの鳴き声は「びゃうびゃうびゃう」と表現されています
些細な事で恐縮ですが、トリックから出た言葉は
「まるっとお見通しだ」です。
これは、スリット美香子の回から出た言葉だと思います。
そして、この言葉は「ウェブログハンドブック」の翻訳版にも、
登場していたと思います。
ご指摘ありがとうございます。なるほどトリックはかなり見ていたのですが勘違いですねえ。
メールである方から、
「
「キラキラ」は小田和正のアルバム名で、
「ガンガン」はエニックスが細々と出していた漫画雑誌の名前
のため、ランキングが高くなってしまっているのだと思」います。
」
というご意見もうかがいました。なるほど。
狗神は映画が大好きです。
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000734.html