2004年01月27日
企画がスラスラ湧いてくる アイデアマラソン発想法
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■17万6千個のアイデアを書いた超人の本
この本には「有効発想密度の法則」という言葉が出てくる。アイデア1000個のうち、現実に使えるアイデアは3個程度という意味で、よくマーケティングの世界で言う「千三つ」とほぼ同じである。このメソッドは、アイデアは数を出し続けることに意味があるという考え方に基づく。著者は毎日発想をノートに書くという作業を、1984年1月に開始して2003年11月末までの20年間で、276冊のノートに17万6000個以上の発想を記録しているという。
著者は1946年生まれで三井物産カトマンズ事務所長。バリバリのビジネスマンであり、書かれていることも学者、研究者のアカデミックな発想学とは一味もふた味も違う。ビジネスの現場と生活の中での実践的発想術として活き活きとしている。
・著者樋口健夫氏によるアイデアマラソンシステム(IMS)公式サイト
http://www.idea-marathon.net/ja/index.html
アイデアマラソンについて説明やFAQ、プレゼンテーション、著者の書籍の紹介などがある。
アイデアマラソンは、言ってしまえばただノートに毎日アイデアを綴るだけ、である。だが、それを毎日続けて何万件も蓄積することは普通は不可能だ。この本は、ビジネスシーンや生活シーンの中で著者が、どのようにモチベーションを高め、習慣化しているかのディティールと、このメソッドの広い効用が熱く語られる。著者はこの本の燃料を使えば一ヶ月は無着陸飛行ができるはずと書いている。読み終わってそれは強く感じた。メソッドは簡単でも、この本はスタートダッシュのブースターとして価値があると思う。
■アイデアを人に話す
アイデアマラソンのルールのひとつは「アイデアは人に話せ」。
ちょうど、そのくだりを読んでいる間に、パートナーの田口さんから、連絡が来た。「橋本さん、今度のイベントで、パナソニックさんが電子書籍のシグマブックのデモ機、貸してくれることになりました!」。え、発売前のあの話題の端末の実物が会場に出せるの?。イベントのひとつの売り物として参加者にも喜んでもらえる。とても嬉しかった。
・無敵会議 Σブックも登場だ!
http://www.project-on.com/archives/000386.html
・シグマブック関連過去記事:ブック革命―電子書籍が紙の本を超える日
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000837.html
田口さんに聞いてみると、パナソニックさんのこの部門と直接のつながりがあったわけではないらしい。たまたま、最近別件での訪問先で面識を作ったご担当者に、今回のイベントのアイデアをメールしてみたらしいのだ。これなどまさに、「アイデアは人に話せ」である。アイデアが拡張され、連鎖され、実現した良い例だなあと思った。
もうひとつ、私もこのイベントのアイデアを話した方がいる。いわゆる成功ノウハウ本を100冊読んで成功できるか検証するというサイトの主催者の方。面識はないが、あまりにユニークなサイトコンセプトに感動して、今回のイベントにきてお話いただけないか、一か八かでメールしてみた。
すると、こういう展開になった。
・俺と100冊の成功本
http://blog.zikokeihatu.com/archives/000105.html
イベントの内容にひとつ何か(私もうかがっていないので)楽しいことが加えていただけそうな気がしてワクワクしてきた。アイデアを人に話す目的は、言語化によりコンセプトを精緻化すること、他者の視点で正当性を検証評価してもらうこと、だけではないのだなと思った。アイデアを人に話すとコトが実現に近づくということなのではないかと思う。この本の著者もアイデアを話すことは「ツキ」を呼ぶと書かれていた。
■ネタ切れがアイデア発想のチャンス
特に感動したのが、ネタ切れこそチャンスと考える著者の言葉だ。20年間で17万件以上考えたアイデアの達人が言うのだから、励まされる。
ネタ切れと言えば、私にとって原稿が連想される。
このブログでも仕事の原稿執筆の仕事でも、連載は最初のうちは簡単である。蓄積したファーストアイデアの在庫があるから小出しに使う。小出しにする本当の理由は長期連載で何度も分けて使えるから、ではない。ファーストアイデアは思い入れが強いから、出し惜しみをしてしまうのだ。もったいぶってなかなか全部を使わない。
1000本以上、商業媒体で原稿を書いた自分の経験からすると、ネタを隠し持っている間は、次のアイデアはでてこないことが多い。使い切ってはじめて、次の、その次のアイデアが出てくる。これは私個人の特性なのかもしれないが、アタマのアイデア格納スペースはきっと有限なのだ。抱え込んだアイデアを表現して追い出さない限り、次のアイデアはでてこない。
そういう感覚を持っていたので、ネタ切れがチャンスという言葉は心に響いた。アイデアマラソンは、ノートに書くことで吐き出すという行為なのだ。この本には脳の学習や認知モデルの話はほとんど出てこないが、アイデア発想の大先輩の暗黙知に溢れている。
この本を半分まで読んだ時点で、別のコラムを書いた。ひとつのソースでアイデアを広げてみた。この話題にご関心のある方はこちらもどうぞ。
・パフォーマンスアートとしてのアイデアマン
http://sentan.nikkeibp.co.jp/mt/20040127-01.htm
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Posted by daiya at 2004年01月27日 23:59 | TrackBack
こんにちわ。私は「企画がスラスラ湧いてくるアイデアマラソン発想法」(日経ビジネス人文庫)の著者の樋口健夫です。HPにて私のアイデアマラソンに対するコメントを読ませていただきました。これほどの深い、鋭い、また本質を見抜いた評価を、初めて読ませていただき、著者として感激しています。私は、蓄積、継続、忍耐をベースにすることで、誰もがこのアイデアマラソンを使って、自己の能力を最大限発揮できると確信を持っています。また、それぞれの専門分野で、このアイデアマラソンの手法では、更に深い発想を得ることが可能で、それが、その方のブレークスルーを得ることができると思います。単純な、本当に簡単な手法ですが、私はこのアイデアマラソンでは、「人に話したくなる」という点で、ネットワーク性を持っていることが、すごく好きなのです。アイデアマラソンで考えた発想を、他人がどのように思ってくれるかを、考えると、アイデアマラソンは、他人とのふれあいを作ります。家の中でも、社会でも、研究所でも、企業でも同じです。それら私の一番言いたいことを、これほど明確に読破いただき、著者として心からうれしく思います。本当にありがとうございます。現在は、ネパール王国カトマンドゥに駐在していますが、この4月ころには日本に帰ります。その後でも、お礼にお会いしたいです。また脳の学習や認知モデルにも、大いに関心があります。
樋口健夫
はじめまして。このサイトの運営者の橋本です。
まさかご著者の先生に読んでいただけるとは感動で言葉もありません。このような状況を想定できなかったもので、若輩が勝手に書評して失礼なことを申し上げてしまっております点、お許しください。
有名なアイデアマラソンの存在は以前より存じ上げていたのですが、日経の文庫になってはじめて中身を拝読いたしました。感動しました。どんなに理論的に完璧な発想の理論も実践しなければ無意味だと思っておりました。人間の個性もありますので、人それぞれの発想術があってしかるべきと感じておりました。他の発想術はどれも良いのですが、向き不向きがあると思ったのです。
アイデアマラソンのコンセプトを知り、このマラソンはどんな発想術もその上に着せ替えることができる、包容力のあるフレームワークであると分かりました。仕事のブレスト会議という特別な時間だけでなく、(家庭を含め)生活と密着、融合することで、発想を継続的に産み出し強化することの具体例のご提示が、大変勉強になりました。
そして何より、20年間それを実践した方がいるという事実が類例のない別格と感じました。有効性を物語る、揺るぎないエビデンスになっていると確信しました。私は先生の半分くらいの年齢の駆け出しなのでありますが、アイデアマン、会議ファシリテーターとして、ビジネスに関わっていきたいと勉強中です。このブログも今のところ5ヶ月以上、毎日続けております。アイデアマラソンで教えていただいたノウハウでこれからも頑張ってみたいと思います。
ご帰国された際にお会いいただけるというお申し出に大感激です。ご多忙中とは存じますが、ぜひお時間をください。どうかよろしくお願いいたします!。(詳しくはメールで一度このあと、ご連絡させてください。)
Posted by: daiya at 2004年01月30日 17:40お返事ありがとうございます。さっき、Raftingから帰ってきました。水は多少すくなくなっていましたが、楽しみました。
これから、今日の分のアイデアマラソンを終わらせるのに、全力を投入します。車の中で38個は出したのですが…。
橋本様のBlogを5ヶ月ほど継続されているのは、特別製のアイデアマラソンです。また、橋本様の、鋭い直感とロジックは、強烈です。ぜひとも、毎日継続されますように。
日本に帰ったら、お会いしたいですね。超本格会議の田口様にも僭越ながら、メールを送りました。そしてお返事をいただきました。カトマンドゥからでも、こうしてネットワークを広げることができるのは、すばらしいことですね。
樋口健夫