2004年01月17日

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・赤ちゃん学を知っていますか?―ここまできた新常識
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2002年1月から12月まで産経新聞朝刊に連載された記事の単行本化。脳科学、認知心理学、霊長類学、教育学など多彩な分野の研究者を、新聞記者が取材して書いた赤ちゃん学の最新事情。日本赤ちゃん学会推薦の書。

・日本赤ちゃん学会
http://www.crn.or.jp/LABO/BABY/
この学会は2001年に設立された新しい団体で、学際的に赤ちゃん研究に取り組んでいる。学会誌投稿論文が読める。

我が家には5ヶ月の息子がいるので、妻から子育ての本を読むよう薦められる。マニュアル本、カリスマ子育て論、トレンド本などを目の前の床に積み上げられてしまう。一応手に取るのだが、なぜか読む気がしない。大抵は写真入で、何ヶ月の子にはこうしましょうとノウハウや体験記が丁寧に並べられている。でも、どうも興味が続かない。目の前に実物がいるのだから自然に接すればいいではないか。

「この本なら数字とか実験とか書いてあるよ」とそんな調子の私を見て、妻から戦略的に渡されたのがこの本だった。いや、別に私は数字や実験が好きなわけじゃないけど、ちょっと読んでみようか、パラパラ、そうそう、こういうのが読みたいのですよ、陥落。簡単に読破。

■笑う赤ちゃん

新生児微笑。産まれたばかりの赤ん坊が眠っている間に微笑する現象。この微笑は一部のサルにも起こるらしいが、本能的なもので、感情の表出というわけではないらしい。この微笑は母親の注意を惹き世話をさせる効果がある。自然の生き残り戦略の上で、遺伝子に組み込まれた仕組みなのだろう。

そして3ヶ月を過ぎると、目を見て笑うようになる。昔、「イヌに遊んでもらう本」というのを読んだことがある。イヌは、基本的にはみつめあってはいけないらしい。イヌ社会では目と目を長く合わせるのはケンカを売るような行為なのだそうだ。(だから、知らないイヌに真正面から目を見て近づいてはいけない)。他の動物もほとんどそうらしい。そして、この本によると、人間と一部のサルは愛情を持ってみつめあう珍しい例だそうだ。微笑みかけると微笑み返す。

ウチの息子も目を見てこちらが笑うと笑うようになった。興味深いのは、息子の機嫌が悪いとき、あやそうとして笑いながら目をみつめると、なんと、首を曲げて目をそらすのだ。何度続けてもそらす。意図的にやっているのは間違いない。彼としては喉が渇いたとか暑いとか暇だとか、問題が解決されるまでは、笑いたくないのだろう。パワープレイ的なコミュニケーション戦術は、生後5ヶ月で既に始まっているのかと感心した。

■赤ちゃん言葉の科学

この本に「日本人の母親が使う赤ちゃん言葉を調査したところ、言葉の途中に「ん」「っ」「−」を含む、三拍または四拍の言葉(例:ねんね、くっく、ぶーぶ、わんわん)が多いことが分かった。」と書かれている。そして多数の実験の結果、赤ちゃんはこれらの言葉に強く反応することが分かった。

私の息子も同じである。他のやり方では、そう簡単に笑わないのだが、「にらめっこしましょ、あっぷっぷ」と「わらいまーしょ、わっはっは」は、90%以上の確率で笑ってくれる。明らかにタイミングも「あっぷっぷ」と「わっはっは」の部分で笑う。まさに実験の通りである。

誰しも赤ん坊に話しかけるときには、声が高くなる。ゆっくり抑揚を大きくする。この言葉遣いは、別の本によると、マザーリースと呼ばれて世界共通の言語現象だそうだ。マザーリースを使うことで、赤ん坊の耳に最も聞こえやすい周波数で、聞こえやすく好ましい声の波形になる。結果としてコミュニケーションが活性化し親は子育てに熱心になる。親子のインタラクションにはまだまだ科学的分析の余地がありそうだ。

赤ちゃんの言葉と言えば、半信半疑のこんな製品もある。買おうかな。

・赤ちゃんの声分析器ホワイクライ
http://www.yasashisa.jp/goods/whycry/index.html
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イヌの鳴き声をマイクで音声分析し感情を液晶に表示するバウリンガルというヒット商品があったけれど、その人間版。「。「ホワイクライ」は、赤ちゃんとのコミュニケーションを強力にサポートします。泣き声(欲求サイン)を分析し、空腹・退屈・不快・眠気・ストレスの5パターンに分類します。」

■赤ん坊の姿が可愛いのは

昔読んだ本に米国の心理学者ヘスによる瞳孔の条件反射作用についての研究成果が書かれていた。人間の瞳孔は関心を持った対象をみるときに拡大する。実験では、何枚かの写真を被験者に提示し瞳孔サイズの変化を記録した。すると、男性被験者は女性ヌードの写真に、女性被験者は男性ヌードの写真に、瞳孔を拡大することが判明したという。だから、肌の露出の高い女性の写真は男性向け商品広告に使うと認知度が高くなるという結論になり、マーケティング業界の有名な薀蓄話になっている。

だが、ヌードの影で忘れられがちだが、この実験で、もうひとつ、瞳孔を拡大した写真があった。赤ちゃん、そして赤ちゃんを抱いた女性の写真である。別の学者の認知心理学の実験では、三頭身で手足の大きな比率の赤ちゃんのような形状は、他の形状と比較して、好ましく認知されるというデータも出ている。

新生児の無意識の微笑、赤ちゃん言葉を使う親と聞き取る子どもの能力、赤ん坊の姿とそれを好ましく思う親の認知特性。どれも親子のコミュニケーションを活性化し、好ましい感情を発生させる仕掛けになっている。親に奉仕させ子どもの生存率を高めることに貢献する。これは人類の遺伝子レベルに織り込まれた愛情発生の秘密なのかもしれない。

さあ、被験者も起きてきたし、そろそろベイビーサインによる非言語コミュニケーション実験でもはじめますか?今日はユニバーサル方式にする?それとも日本手話式にする?


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Posted by daiya at 2004年01月17日 23:59 | TrackBack このエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーをはてなブックマークに追加
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