2004年01月15日

ブック革命―電子書籍が紙の本を超える日このエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーをはてなブックマークに追加


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・ブック革命―電子書籍が紙の本を超える日
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電子書籍の最近の動向や可能性、外部からでは分かりにくい、業界事情をジャーナリスト視点で解説してくれる。出版業界の返本率は4割。本と雑誌の売り上げ減少が7年続く出版不況の中で、電子書籍が注目されている。大手出版社が電子書籍に乗り出したものの、業界団体の電子書籍コンソーシアムは、意見対立で瓦解、分裂し、形式の標準化は相変わらず統一できていない。そういった経緯の裏側にある、プレイヤーの思惑を、著者は目に見えるように説明する。

やはりビジネスマンとして興味深かったのは、唯一儲かっている電子辞書の話。

辞書出版の市場では2002年の段階で、電子辞書の売り上げ(420億円)が紙の辞書の売り上げ(250億円)を抜いてしまったそうだ。本来、年間1000〜1200万冊は売れるはずだった紙の辞書は、800万冊しか売れず、単価の高い電子辞書は390万台も販売されたとのこと。百科事典も同様の傾向があるらしい。検索して読むタイプの書籍の電子化は自然なことのように思える。

専用端末を使ってネットワーク配信される電子書籍を読むというモデルは、また最近注目されている。

・2004年は“電子書籍元年”に? ソニーが本格参入
http://www.itmedia.co.jp/news/0311/13/nj00_pub.html

構図としてはソニーと松下のシグマブックとの戦いである。

・シグマブック(松下)
http://www.sigmabook.jp/
記憶型液晶と省電力設計により数ヶ月間電池交換不要というのが素晴らしい。電源を落としても液晶に表示が残る液晶を使う。読書中は電源が切れていて良いという逆転発想。

どちらも紙と比べたら持ち運びしやすいとは言えない。まだまだ技術革新が必要な気がする。以前より注目されながらなかなか実用にならない、紙のように薄く折り曲げられるディスプレイe-Inkは期待できそうだ。電源部や操作部も含めて紙のように薄く柔軟ならば電子書籍リーダーは本当に普及するかもしれない。

・e-Ink
http://www.eink.com/index.html
eink01.JPG

■本はなくなるのか?

先日のスティーブバルマーの講演では20年後に紙の本はないというスピーチがあった。世界最大のソフトウェア産業のリーダーとして、ないと言い切る勇気を尊敬するけれど、紙は数百年の技術の集積がある枯れたハイテクでもあり、完全にデジタル文書でリプレイスできるとは思えない。

レコードはCDによって事実上なくなってしまった。ビデオテープも、DVDやHDDレコーダーによって近い将来なくなってしまうだろう。コンピュータのプログラム記憶メディアとして紙テープが消え、カセットテープが消え、8インチや5インチのフロッピーが消えた。今の3.5インチフロッピーもなくなりそうだ。あるメディアを、新しいメディアが一掃することはよくある。古いメディアの機能を完全に上回り、コストも安くなれば完全なリプレイスが起きる。

しかし、テレビが登場しても長い間ラジオは残っている。シャープペンがあっても鉛筆がある。クーラーと扇風機、エアコンとストーブ。同じ用途でも、若干の違いによって長く生き残る技術も多い。紙は電子書籍に対してすべてのメンで「ローテク」ではないので、ビデオやフロッピーのような推移にならないと考える。

書籍、雑誌、新聞がシェアを少なくすることはあっても完全なリプレイスはないのではないか。この本では、角川書籍事業部部長の「近い将来に日本の出版物の20%までは電子書籍になるのではないか」という意見が紹介されているが、さすがに妥当な意見と思う。

最近面白かった本に、「「紙」というデバイスを200%使いこなす!! 」と表紙に書かれたこの本がある。紙とデジタル文書の良いところをどちらも使いましょうという趣旨で、電子化のツールや両方の活用法を提案する本である。

・パソコン+スキャナの賢い使い方『職場の書類』はこうして作る
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■紙の電子化

結局、紙の電子化が進むというオチになりそうな気がする。紙に書かれたコンテンツがデジタル化されるという意味ではなく、紙という素材が電子化していくのだと考える。既に子供向け絵本には薄いスピーカーが搭載されて音の出る絵本など当たり前のように売られているが、さらに高度な展開を予感させる研究と技術もたくさん見つかる。

・日立ミューチップ
http://www.hitachi.co.jp/New/cnews/030902a.html
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世界最小クラス0.4mm角のアンテナ内蔵型の非接触ICチップ「ミューチップ」。紙に埋め込める。「0.4mm角のチップのみで、受信した電波を動作電力として非接触でID番号を読み取り機に送信することができます。このため、紙幣や商品券をはじめとする有価証券にそのまま埋め込むことが容易になるほか、これまでの非接触のICタグでは難しかった非常に小さなもの、薄いものに装着することも可能です。」

・Active Book
http://fig.ele.eng.tamagawa.ac.jp/~siio/projects/activebook/indexj.html

ここではバーコードを印刷した絵本と専用リーダーによるマルチメディア絵本の試作例だが、次のような用途は提案されている。「(1) テレビ番組雑誌に適用して、赤外リモコンインタフェース経由で録画予約を行なったり、チャンネルを切り替える、(2) 地図帳に適用して、ナビゲーションシステムに目的地や現在地を入力する手段として使う、(3) ビデオテープタイトルやカラオケ曲名のメニューブックに応用して、目的のコンテンツの再生を行なう、などの応用が可能である。 」

・ActivePaper
http://fig.ele.eng.tamagawa.ac.jp/~siio/projects/fieldmouse/indexj.html
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・FieldMouse による実世界指向インタフェース
http://pitecan.com/papers/JSSST2001/JSSST2001.pdf

紙で家電制御のリモコンを作ったりする例。こういう方向が進んでいくと、私たちは自分の使いやすい画面設計でアプリケーションの絵を描くだけで、それがPC上で動いたりもしそうだ。

結局、パピルスが羊皮紙になり、パルプ紙になった次には、e-Paperになる。そういうことなのではないだろうかと、この本を読みながら、自分の考えをまとめていた。


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Posted by daiya at 2004年01月15日 23:59 | TrackBack このエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーをはてなブックマークに追加
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Comments

いつも楽しみに読ませていただいております、marbleの吉岡と申します。先ほどトラックバックしたものが2重打ちになった上、文字化けになってしまった模様です。申し訳ございません。お詫び申し上げます。

Posted by: yoshioka at 2004年01月16日 15:26

UTF-8 と Shift_JIS が混在しているから文字化けしているのだと思います。

「紙の電子化」という発想は面白いですね。どんなシリコンを埋め込んだら面白いのだろう。

Posted by: yukoba at 2004年01月17日 01:40
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