2003年11月16日
インターネットの匂い:Smell Over IP
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昨日の記事で、情報の匂い(scent)について触れた。今日は比喩的な意味ではなく、嗅覚を刺激する匂いとインターネットの話。
焼き鳥屋や、うなぎ屋の前を通ると強烈な匂いが漂っている。空腹の時にはついつい吸い寄せられてしまう。景気の良い呼び込みの声や、メニュー写真程度では、そこまでのシズル感は起きない気がしている。匂いというのは五感のうちでも、本能に近い部分に働きかけるアトラクターと言えそうだ。生唾が出てくる。室内空調があっても、わざわざ匂いを通りへ振りまいている店が多いのは、集客効果、商売繁盛を狙ってのことだろう。
今のところインターネットは無臭である。
インターネット上で匂いを交換する技術というのは90年代後半からあって、私は体験したことさえある。年度を忘れたが米国ラスベガスのCOMDEXにDigicents社というベンチャーが化学物質を混合させる装置を使って、離れた場所に任意の匂いを発生させるデモをやっていた。同社ブースの周囲は、繰り返しのデモで焼肉やポップコーンの匂いを発生させるため、それらが混ざり合って異臭を放っていた。その後、iSmell Personal Scent Synthesizerという個人向けの匂い発生装置を販売開始するが、うまくいかなかったのか、会社は消えてしまった。
ismellはこんなデバイスである。メールやWebに匂いを埋め込むサービスを実現するはずだった。
その後も何社ものベンチャー企業がインターネット上で匂いを運ぶ技術を開発している。
・Aromajet
http://aromajet.com/main.htm
AromaJetは「Smell over IP(インターネット通信上での匂い通信)」の開発をしている。SmellKioskというUSBでPCに接続したデバイスで、ユーザは匂いを合成する。16種類の匂い成分の混合比率のデータをSmellサーバを介して、相手に送ると、相手のSmellKioskが同じ匂いを合成して漂わせるという仕組みだ。同社は2000年にPinokeというコードネームのゲームの仮想空間に使う、ヘルメットデバイスに装置(40ドルから80ドル)を内蔵するという発表をしているが、サービススタートの話は聞かない。
・trisenx
http://www.trisenx.com/product.html
こちらも20個の匂い成分カートリッジ内蔵で合成と配信を行うデバイス。実際に販売しているので誰か買ってみて、具合を教えてほしい。合成できる匂い2000種類をExcelファイルで公開している。匂い合成装置ScentDomeは269ドル〜。単一の匂いの発生させる簡易版は9月まで無償で配っていたようだ。ゲームを使った、非常にユニークなマーケティングを行っている。
・ゲーム
http://www.trisenx.com/game.html
Web上で匂いの発生源を撃つシューティングゲームを提供していることだ。これで高得点すると、同社の最も廉価な装置に匂いをひとつ配信してもらえるらしい。掲示板はあるがまったく投稿がない。うーん、このビジネス、どこまで本気なのだろうか?。
こうしたSmell over IPへの取り組みは、半分冗談のように思えるが、用途を考えてみると、
・香水のサンプルの配布(販売やマーケティング)
・オフィスや家庭の部屋の香りを時間帯に最適化して放つサービス
・ワインやコーヒー、お香の販売の支援
・口臭の診断など遠隔医療支援
・恋人からメールが着信するとバラの香りなどアンビエントコミュニケーション
などニッチな市場は考えられる。が、どれも単一のビジネスとしてはパイが小さいような気がする。そもそもPCのある空間は無臭を理想とする人が多いだろう。ひとつ考えてみた私の案は日本人の毎日入る、お風呂である。デバイスに無線通信と防水加工を施して、お風呂に名湯の香りや花や果実のフレグランスを配信するのであれば、入浴剤のオプションとして売れたりするかもしれない。入浴剤メーカーや香水メーカーがサンプル無料で配信するならちょっと使ってみたい。消臭機能も併せ持てばさらに便利だ。家族ごとに異なる香りのお風呂を楽しめる。
ひとつ間違えると世界同時多発異臭テロが起きそうなのが怖いところだが。
・総武線猿紀行第117回「最臭兵器のナゾ」
http://www.1101.com/saeki/archive/2002-02-13.html
米軍の臭いで戦意喪失させる爆弾の話
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Posted by daiya at 2003年11月16日 23:59 | TrackBack