2003年11月10日
「分かりやすい表現」の技術
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書店でパラパラめくった段階で名著の予感があったのだが、90分で読み終わって、その予感を遥かに超えて、感動してしまった本。目からウロコという素直な感想。内容はタイトルそのまま。「分かりやすい表現」の技術について、実際の街で目にする標識の写真や、ビジネス文書の実例を図示しながら、こう改善すれば良いと案を提示する。著者が提唱する、「意図を正しく伝えるための16のルール」の使用前/使用後の実例がまさに一目瞭然の違いなのだ。これ以上の説得力はない。
表現力だとか、文章術の本はたくさん読んできた。大家の著作もある。どれもそれなりの説得力を持った理論や心構えを教えてくれた。だが、理論や心構えが分かるだけでは実践できないし、匠の技は本を読むだけでは習得できない。それに対してこの本の事例やノウハウは、ビジネスシーンのそこらへんに落ちているような話ばかりだ。そのままでも使える。
この本の構成や文章自体が、分かりやすさの見本となっているのも、著者が「本物」であることを示しているように思う。大手ソフトウェアメーカーでエンジニアをしているとプロフィールにある。専門の研究者ではなく、ビジネスマンであり、実践者であることが、この名著を書かせたのだと思う。15万部のベストセラーだそうだ。
事例を引用するとあまりに分かりやすいため、そのままの転載になってしまうので、この本の書評ではやめた。冒頭で分かりやすさの定義をしている部分だけ引用させてもらうと、
■分かるとは何か
1 「分かりやすい」とは「分かっている」状態に移行しやすいという意味である
2 「分かっている」状態とは「情報が脳内整理棚の一区画にしまわれている」状態である
短期記憶や長期記憶、チャンク、ワーキングメモリ、忘却曲線、アフォーダンス....などなど。認知論や学習の専門用語を著者はたぶん、すべて理解した上で、やさしい言葉で上記の定義をして内容を語っている深さが伺える。たくさんのことを知っているより、たくさんのことを伝えられることが知識の真価なのだなと感じた。
私も技術の複雑な事柄を、分かりやすく表現できるようになりたいと思うし、このBlogはその経験の場にしたいと思っている。
Web制作や情報システムのナビゲーションの設計者に特におすすめ。企業のアカウンタビリティという点では経営者にも参考になる。巻末の分かりやすい表現のためのチェックポイント表はツールとして仕事の現場で活用できそうだ。
評価:★★★☆☆
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Posted by daiya at 2003年11月10日 23:59 | TrackBack
この本、ぼくも読みました。
良い本ですよね!
専門学校の営業クラスの生徒さんにもお薦めしています。