2003年11月04日
22世紀から回顧する21世紀全史
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結構ページ数はあるのだが読むほどに目が冴えて、連休の一晩でいっきに読みきってしまった。
著者は二人。NASAの主任研究員で火星探査プロジェクト及び2005年の火星偵察オービタープロジェクトの中心人物Gentry leeと、ベストセラー「スティーブン・ホーキング 天才科学者の光と影」の著者Michael White。これからの100年の政治・経済、社会・文化、技術を大胆に、しかし詳細に描いた壮大な未来予測の書。22世紀の歴史家が100年を振り返る小説という形式をとっている。
物語は、バイオ革命の明暗、核の惨劇、混沌の時代、新世界秩序の構築、ネットワークワールドに暮らす、21世紀、宇宙への旅の順で、全6章から構成されている。時代を俯瞰するマクロの視点と、英雄と名もない一般生活者の個の視点が交錯しながら、未来の歴史書が丁寧に織り上げられていく。
ここに描かれているのは、タイムマシンやテレポーテーションが当たり前の世の中ではない。私たちの生きる時代から、連続した延長線上にある、現実感を持った未来である。バイオやIT技術の発展による、明るいだけの未来でもない。経済や社会の大きな停滞、戦争の惨禍、依然解決されない南北問題といった、我々の時代が抱えている病根の行く末もまたリアルに記されていく。
Gentry Leeはさすがは現役の宇宙科学者。彼にはアーサー・C・クラークとの共著「宇宙のランデブー」を持つという作家としての経歴もあるが、これはSF小説ではなく、技術予測、未来予測のレポートとして読み応えがある。実際、私はこの本を、東京の青山ブックセンターで購入したが、小説ではなく科学書のコーナーに置かれていた。この予測がどの程度当たるかはともかくとして、長いスパンでITや技術を考えてみたい人には、是非にもおすすめしたい。
なお、この本を原作に世界的に有名な映像制作会社ドリームワークスが長時間ドキュメンタリ番組として映像化することが決まっているらしい。Michael Whiteはディスカバリチャンネルのコンサルタントなので、日本語チャンネルで日本放映もされるのではないだろうか。
現実的な未来予測というとデルファイ法による予測調査がある。日本では文部科学省が実施しているものが知られている。
・第7回技術予測調査− 我が国における技術発展の方向性に関する調査 −
http://www.nistep.go.jp/achiev/ftx/jpn/rep071j/idx071j.html
文部科学省科学技術政策研究所 科学技術動向研究センター。5年おきに行う。2001年7月発表の最新版。
4000人に及ぶ科学者、有識者に繰り返しアンケート回答を行った結果の未来予測である。長いので、情報通信のパートだけ読むのがおすすめ。日本の科学者たちが、今後の数十年でコンピュータやネットワークがどう進化していくか、どの技術はいつ頃普及するかといったことがびっしりと予測されている。
・「情報・通信」分野の調査結果
http://www.nistep.go.jp/achiev/ftx/jpn/rep071j/3-02_IT.pdf
ホットワイアード誌も10年予測の記事を今年の初めに掲載していた。
・将来技術予測:10年以内に日常生活に浸透する新技術は?
http://www.hotwired.co.jp/news/news/technology/story/20030123301.html
ところで、呆れたことに2億年先も予測する会社がある。科学者と映像プロデューサが設立した、米Future is wild社は、人類が地球を捨て宇宙へ飛び立った後、地球の生態系がどのように進化し、数百万年後から数億年後までに、どのような生物が登場し、どのような自然淘汰を進めていくかを映像化している。国内では、スカパーやCATVのディスカバリチャンネルで今放送中だ。何度か私も見たが、CGがすばらしかった。
・フューチャーイズワイルド:日本のディスカバリチャンネル
http://japan.discovery.com/series/serintro.php?id=273
・Future is wild (なぜかMSIEで表示できない?)
http://www.thefutureiswild.com/flash/index.html
本当は明日のことだって誰も分からない。でも、想像力は創造力につながって実際に未来を変えていく力になるのではないだろうか?未来は予測するものではなく、ヒトの情熱が作り上げていくものなのだから。
Passion For The Futue。
ということで、キレイキレイに話をまとめて、私は寝ます。ではっ。
評価:★★★☆☆
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Posted by daiya at 2003年11月04日 23:59 | TrackBack