モンスター
『海賊と呼ばれた男』で本屋大賞を受賞した作家 百田 尚樹の作。整形を繰り返して絶世の美女となった主人公が、"モンスター"と呼ばれ醜い顔に苦しんだ少女時代の復讐を果たす壮絶な物語。美人と不美人のメリット、デメリット、人生において容貌の与える影響を、残酷なほど明らかに書いているのが痛烈で面白い。
人は表面的な印象に左右される。たとえば誠実そうな顔と不誠実そうな顔というのは確かにある。誠実そうな顔の人は誠実そうだと思われる。それは真理だと思う。そして周囲から誠実な人として扱われたら、人は誠実に振る舞おうとも思うだろう。だから誠実そうな人は(少なくとも表層的には)、実際に誠実であることが多いかもしれない。
誠実そうな顔とは何かと言えば、結局のところ、物理的なレイアウトの問題である。この作品に詳しく語られるように、顔の薄い皮一枚で、目鼻の0.1ミリの違いで人の印象は大きく変わるのだ。
モラリストは内面が外面に現れるというが、外面が内面化するケースだって、現実には少なくないだろう。正確には内面と外面は相互作用で形成されていくはずだ。普段、世間では遠慮してはっきり語られないロジックを、次々に明らかにするのがこの小説の読みどころ。
できたら一度は、とびきりの美女に生まれてみたいなと思う。常に異性の視線を感じるだろうし、幼少時から、ちやほやされるだろうから、まるで人間観、人生観が違ったものになるのだろうなと思う。実際には無理な話だが、ちょっとだけそんな体験をすることができる作品だ。
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