かわぐちかいじ自選短編集 無頼編
「マンガを描き始めた頃、ヤクザ映画が全盛で、映画好きの私はヤクザ映画をよく観ていて、描くマンガも影響された。ならずものは組織や世間に合わず反発し、自滅覚悟で突っ走る。そんな人間を主人公にした作品ばかりを描いていた。 それからしばらくして、私もいっぱしに家庭を持ち、家族ができた。描くマンガも、自滅はマズイあろうと思い始めた。」(あとがきより)
かわぐちかいじの初期作品11篇を収録。「初出不明」の単行本未収録作品が多数混じっている。
主人公と時代設定はバラエティに富んでいる。明治維新に取り残された流れ者、敗戦直後の訳ありの復員兵、プロとしては芽が出なかった元ピッチャー、パンチドランカーになっても戦うボクサー、入れ墨を背負って温泉地で淫靡なショウに出演する女、店を持つために働くホステス1年生、女からカネを巻き上げるのが生業のプロ雀士などなど。
自分の欲望や野心を抑え込むことができず、社会や組織からはみでてしまう無頼の男女たちを愛情をもって描いている。
かわぐちかいじの代表的な長編作品の主人公たちというのは、ならずもの志向で、国家や組織に抵抗する人間を描きつつも、結局は大義を持つ組織や秩序をつくろうとするまっとうな人間像であることが多い。無頼のヤクザ、ならずものでは話が長続きしないのだから当然だが、短編ではそうした人間臭い主役たちが生き生きとしている。そしてなによりかわぐちかいじ作品にありがちな小難しさがなくていい。
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