夢売るふたり
西川美和監督作品。一筋縄ではいかない、相互依存する男と女のドロドロ関係がたまりません。女優 松たか子最高。
幸せになるか不幸になるかは別として長年連れ添えるのは、相互依存する夫婦なんじゃないだろうか。それは互いの足りないところを補完し合うなんてキレイごとじゃなくて。
片思い、両思いという言葉が恋愛初期にはある。でも、二人の関係が長く続くと、単純な片思いの双方向化では説明できないはたらきが生まれる。泥沼みたいなどうしようもない場の引力が創発して二人を穴に引き込む。
お前、俺の稼ぎが少なくてハズレつかんだと思っているだろうと夫は妻をなじる。妻は別にそんなことは思っていないのだが、否定しても肯定しても、夫はそうに決まっていると自分を追い詰めていく。妻はそれを見て、だめな男に尽くす自分に生きがいを感じる。
阿部サダヲもいいんだけれど、松たか子の暗い表情が、喜怒哀楽の分類に収まらない複雑な心情をとらえている。前半で浮気されて食パンをむさぼり喰うシーンはわかりやすい修羅の表情で良かったが、話が進んで事情が複雑になるにつれて彼女に求められる演技は難しくなっていく。愛憎や損得の相互依存の表情を見事に計算して表現してみせた。出てきた頃は良家のお嬢様みたいなキャラだったのに凄い女優になったなあと思ったら、この作品で彼女は、2013年 第36回日本アカデミー賞 優秀主演女優賞をとっているのだった。
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