カウントダウン・メルトダウン
ジャーナリスト船橋洋一が文芸春秋から出した福島第一原発事故ドキュメンタリ上下巻。全交流電源喪失から一旦の収束に至るまでを時系列で21章に分けて語る。大作だが、関係者の会話を中心として状況がまとめられているので読みやすい。そして緊迫感がある。
原発事故の前半で最も印象的なのが管首相のイライラ。中途半端に原子力の知識があったために、関係者に怒鳴り散らして、現場をかなり混乱させてしまった。誰しもイライラしていたわけだが一国の首相としては人格的に問題があったのが明らか。
「今、福島第一から撤退すれば、1号機から4号機、5,6号機まで全部爆発する。福島第一原発だけでなく福島第二原発も爆発する。」「日本の領土の半分が消えることになる。日本の国が成り立たなくなる。何としても命がけで、この状況を抑え込まないといけない。」
そして、事故を何度振り返ってもこの逃げられないぞ発言はなんだったんだろうと思う。
「君たちは、当事者なんだぞ。命をかけてくれ。東電は逃げても、絶対に逃げ切れない。金がいくらかかっても構わない。日本がつぶれるかもしれないときに撤退はありえない。撤退したら東電は100%つぶれる......。」
当時は首相の本気を示す言葉だと思っていたが、キョトンとした顔で東電の幹部は首相の一方的な演説を聞いていたという。重要な場で話がかみ合っていなかったのだ。
3月14日の吉田所長のことば。「細野さん、すみません。もうダメかも知れません。2号機に水が入らないんです。原因がわからないんです。このままいくと燃料棒全露出になってしまいます。」。報告を聞いて管首相は「制御不能になったということか」「ダメか...」。
この国がまた緊急事態に陥ったら、決して政府発表を信じてはいけない。まず最悪の事態が裏で進行している可能性を想定して、個人が判断をしなければならないということがはっきりする。
・死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日
http://www.ringolab.com/note/daiya/2013/01/post-1757.html
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