夜見の国から 残虐村綺譚
これは驚いた。コンビニで売られているような安いホラーかと思ったら、そうではなく、すごくいいじゃないか。八つ墓村のモデルとなった津山三十人殺しを描いた長編漫画作品。描写が直截的で強烈なので猟奇系が苦手な人にはおすすめできないが。
村人たちの冷たい仕打ちに怒りを貯めこんできた青年がブチ切れて、村人たちを次々に惨殺して回る。鬱憤を貯めこむまでの緊張感と、それが破裂するときの高揚感。どちらも完璧に描いた。村人の"躾"と称する主人公へのいじめは陰惨極まりなく、またその復讐を何倍返しにもして返す。最後の晩は圧倒的な怒りの前に社会とか道徳とかは完全に消滅してしまう。
津山三十人殺しは資料がいっぱいあるから、リアリティ重視でそのまま描くこともできたはずだが、かなり著者ならではの創作を入れている。その創作がとてもうまく活きていて、村八分にされた若者が大量殺人者へと変わっていく狂気のプロセスが説得力を持っている。
この作家は別のをもっと読みたい。
津山三十人殺し―日本犯罪史上空前の惨劇
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/10/post-853.html
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