天智と天武 1
天智天皇といえば中大兄皇子のこと。645年、中臣鎌足と組み、政敵の蘇我入鹿を天皇のの前で暗殺した大化の改新や朝鮮半島での白村江の戦いで有名。天武天皇はその弟であり、天智の皇子を壬申の乱で倒して天皇となった人物であり『日本書紀』と『古事記』の編纂をはじめたことでも知られる。この二人による日本古代史上で最大の兄弟喧嘩を描く。まだ1巻だが傑作の予感。
副題が新説・日本書紀。大胆な史実解釈もある。まず天武天皇(大海人)を蘇我入鹿と皇極帝(天智天皇の母)の間に生まれた子供としている。天武天皇の出生について史料上はっきりとしていないという事実をうまく活かした。天智天皇からすると、自分と同じ母親を持ちながら、暗殺した政敵の息子でもあるという設定で、複雑な人間関係がつくりだされた。
明治時代のフェノロサと岡倉天心が法隆寺・夢殿で秘仏を暴く冒頭シーンから物語を始めるなど原作の演出が冴えている。絵も少女漫画的過ぎず、男子読者も恥ずかしくないかんじで実にいいのじゃないか。マイナーな時代の歴史物なので、万人受けはしないのだろうが、このレベルで続巻がでていけば高い評価になりそう。
人質として日本に滞在している百済、新羅、高句麗の王子たちも二人の物語に絡んでくる。当時の日本が朝鮮半島の3国間の均衡に影響力を持っていたからだが、白村江の戦いに至る国際展開も、これからの物語のスケールとダイナミズムを大きくしていきそうだ。
安彦良和の「ヤマトタケル」も始まったし、里中満智子も古事記を描き始めたし、今年は古代史漫画が熱いな。
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