ヤマトタケル (1)
ガンダム ORIGINを完結させた安彦良和が『ナムジ』『神武』の続きを20年ぶりに描き始めた漫画。当初から3部作の構想だと聞いていたが、まさか3作目が実現するとは嬉しくて仕方がない。個人的に、これほど夢中になった漫画はないというくらい偏愛していたシリーズ。
古事記や日本書紀の荒唐無稽な物語が、現実の歴史ではこういうことだったのではないかと大胆な解釈をして、それを生々しい感情をもつ男女の群像劇に仕立てていくのがシリーズの特徴。ある意味ではガンダムという神話を翻案して、よりリアルで整合性の高いORIGINに昇華した創作プロセスと似ている。
前2作のベースとなった安彦氏の日本古代史観は、原田常治の『古代日本正史』に大きく影響を受けている。しかし、この20年間で原田史観はトンデモという評価が確定してしまった。続編を出す場合に、ヤマトタケルの時代の理論構築をどうするかが重要になる。長年のファンも注目していたはず。だから第1巻の「序章」は物語の整合性を合わせるための「言い訳」と、今後の舞台設定の解釈説明という異例の始まり方をする。詳細まで明かされないが、土台となる理論構想がしっかり固まったということなのだろう。
第1巻はヤマトタケルが女装して川上タケルを刺殺する話。ここだけでも十分に3作目が前2作に劣らぬ傑作になりそうな期待感を持たせてくれる。タケルの娘の鹿文というキャラクターを登場させているが、歴史上では鹿文は川上タケルの別名であるらしい。架空キャラであるから、物語の中では自由度が高そうで、今後どんな重要な役割を担っていくのか大変気になる。
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