建設業者
インタビューの面白さがたっぷり味わえる傑作。
鳶、クレーンオペレーター、鉄骨工、サッシ取り付け工、宮大工など、建設業で働く現場の労働者37人にインタビューして彼らの素顔に迫った。「この仕事のやりがい?そういうものは、なければないで一向に構わないんじゃないですか」。血の気の多い荒くれ者の集まりというイメージがあるがという問いに「うん、実際そうでしょう(笑)」と答える鳶。飾らない建築現場のオヤジ達の肉声が聞こえてくる。
「昨今、いかに川下から川上へさかのぼれるか、使われる側から使う側へ立場を逆転させるか、そんな"成功法則"を説いた書物が書店の棚をにぎわしているが、少なくとも彼らの心的傾向に、そうした「成りあがり」的上昇志向は見当たらない。いつもの場所で、いつもの仕事を、いつものように完璧な状態にまで仕上げていくだけ、それ以外には関心はないかのようである。」
仕事にプライドを持っている人もいるが、持っていない人もたくさんいる。年配の人が多いので、身の丈以上の夢を抱かない。現場の厳しい上下関係や理不尽に慣れており、自分のできることをできる範囲でやるまでだと覚悟している。
上昇志向で意識の高さを競うようなビジネスの世界と違った就業観が新鮮に思えた。働き方を考えるうえで「ワークシフト」と並んで読んでおくべき一冊ではないかと思う。
●目次
■鉄であれコンクリートであれ
鉄骨鳶(湯本春美)「思いやりで仕事が回る」
クレーンオペレーター(千葉清和)「勝負は一本目の柱で」
鉄骨工(池田章)「中途半端な人間が必要なときもある」
非破壊検査(小正雄)「コンパニオンのように」
鳶・土工(井上和之)「ちゃんと働いていれば、ちゃんとした生活ができる」
解体工(村上文朗)「とにかく近所の人を大事にしてる」
型枠大工(佐藤豊)「親方の仕事は雰囲気づくり」
ALC建て込み(小堺恒昭)「子供に見せられる仕事って」
ほか・・・・・
■裏か、表か
給排水設備(小池猛)「一本一本心臓から血管をつないでいくように」
電気設備(保坂和弘)「『最後』の仕事」
石工(関田嗣雄)「伝説の親方」
タイル工(高橋政雄)「それから、劇団に入団しました」
左官工(浜名和昭)「必ず誰かが見ている」
ガラス工(三本正夫)「機関銃はダメだけど」
塗装工(ロバート・マティネス)「『遊びながら』がちょうどいい」
建具吊り込み(田辺敏之)「未知のものを目の前にしたとき」
カーペット張り(樋口仁朗)「膝が命」
畳張り(浜崎和馬)「いろいろ誤解されているようで」
ほか・・・・・
■木と伝統に魅せられて
素材生産(塩野二郎)「大事なのは人間の中身だからね」
林業(田中惣次)「誰が山を守ればいいのか?」
製材(沖倉喜彦)「いま、木がものすごくよく見えてきている」
木挽き(東出朝陽)「何が見えてくるかは、まだ分からない」
曳家(飯嶋茂)「どんな建物にも急所ってもんがある」
洗い屋(海老沢博)「クスリで洗ってるんじゃないんだよ」
宮大工(金子浩晃)「やりたい気持ちをどこまで抑えられるか」
宮彫師(渡辺登)「たとえ金儲けはできなくとも」
社寺板金(本田三郎)「リズムをつくって叩くだけ」
ほか・・・・・
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