盤上の夜
囲碁、チェッカー、麻雀、古代チェス、将棋。ボードゲームをテーマにした短編集。第1回創元SF短編賞山田正紀賞。
チェス盤を使うチェッカーというゲームでは、コンピュータによって完全解が解明されており、互いが最善の手を打つならば必ず引き分けになるということが分かっているそうだ。より複雑なゲームである碁や将棋も、時間の問題で、いずれは同じように完全解が求められてしまうのだろう。
完全解がでても多くの人間は、遊びとしての囲碁将棋を続けるだろう。しかし、完全解の存在がゲームからある種のロマンを失わせることも事実なのではないか。最善の手を打つ限り、先手が必ず勝つということがわかってしまえば、あとは減点主義のゲーム観しか残らないわけだから。
第一話では四肢を切断されて見世物にされた日本女性が、アジアで賭け碁の世界に生きる。将棋盤を自らの身体感覚に取り込むことで、最強の打ち手となっている。コンピュータの計算能力に対して、身体性から得られる勘とは何かを深く考えさせられる内容だ。
確率論、完全解、身体性、心理戦など6つの短編はそれぞれ別の角度から対局ゲームの本質に迫っていく。
Kindleで読んだ。
・名人
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/05/post-988.html
川端康成の囲碁小説。
・天地明察
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/06/post-1240.html
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