ザ・ウーマン
ケッチャムと言えば代表作『隣の家の少女』が有名だが、実は私、読んでいながら、内容があまりに陰惨残酷猟奇的過ぎる上に救いがない話なので、このブログで紹介するのを控えたという経験があった。だからこの作品もどうしようかなあと思ったが読んだらはまってしまった。やっぱり陰惨残酷猟奇的なのだけれどそれだけではなく、ミステリ要素や意表を突く展開もあり、ミステリ系ホラー小説として傑作だと思う。
狩猟を趣味とする弁護士の男が、ある日半裸で森をうろつく野生児っぽい女を捕獲して、自宅地下室に監禁して飼うという話だ。家族にもこの女の面倒を見ろと命令する。監禁された女は日々、男に虐待されるが、その凶暴さは並大抵なものではない。いつ捕縛を脱して家族を皆殺しにするのだろうか?という緊張感漲っている。
ところで渋谷でカルトホラー系に強かったミニシアターのシアターNがもうすぐ閉館する。ホラーだけでなく『ホテルルワンダ』の舞台挨拶をみたのもシアターNだった。先日、見納めとして本作の映画版『ザ・ウーマン』が上映されていたので見に行ってきた。小説版は、ケッチャム単著ではなくこの映画監督のラッキー・マッキーが共著者として名を連ねているということもあって原作に忠実に映像化をしている。どんな内容かは予告編がよい感じにできているので見てほしい。
・ザ・ウーマン
http://www.the-woman-movie.com/
映画は低予算のはずだが決してB級映画にならず、キャラクターも描けており、猟奇ホラーとして上質で完成度が高い。米国の農場が舞台でそれにマッチするカントリーロック音楽も素晴らしかった。あんなに牧歌的な農場で、あんなに普通に見える家族が、あんなとんでもないことしちゃってというギャップが、映像でも見事に表現されていた。小説を先でも、映画が先でも、この作品のホラーの魅力をたっぷり味わえると思う。
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