劇画毛沢東伝
藤子不二雄Aが1971年に発表した作品。
「ぼくが描いたのはその前期である。この間は毛沢東にとって、波乱と苦難に満ちた時期ではあったが、"中華人民共和国の建国"という大きな夢とロマンがあった。そして、その頃の毛沢東は革命の戦士であると同時に、志の高いロマンチスト、ヒューマニストでもあったと思う。しかし、建国後の毛沢東は、7億の人民を統治する大指導者として、ロマンを捨てた国家内闘争の道へと進まなければならなかった。」(あとがきより)
文化大革命以降の毛沢東にはダークなイメージもあるが、1949年10月の中華人民共和国成立までの英雄としての毛沢東を描く。登場人物や勢力が多くてわかりにくい中国現代史を、毛沢東という強烈なひとりの英雄の視点で描くことで随分とらえやすくなった。
影絵なみのベタ塗の絵が強烈だ。粒子の粗い報道写真みたいなコマも多い。激動の時代にぴったりの描写であり、歴史解説中心のコマまでもがドラマチックにみえる。
1971年に漫画サンデーで連載された「革命家シリーズ」の第一弾だそうだが、同シリーズはその後『劇画ヒットラー』(水木しげる)、『劇画マルクス』(滝沢解作、芳谷児画)、『劇画マホメット』(つのだじろう)と続いたらしい。ヒットラーは読んだ。ざっぱんになっているつのだじろうをなんとしても読みたい。
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