光圀伝

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・光圀伝
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この小説を読まないのは大損。NHKは大河ドラマの原作にすべき。120点。

「「大義なり、紋太夫」
光圀は優しく囁きかけると、膝下に捕らえた男を、ぶつりと脇差の刃で刺した。」

1500枚の長編は67歳の光圀が少年時代から可愛がってきた家老を自らの手で刺し殺すシーンから始まる。天下の副将軍が生涯を賭けた大義とは何だったのか。水戸光圀といえば好々爺の水戸黄門がお供を連れて諸国漫遊するイメージがあるが、あれは史実とは異なる。常陸国水戸藩の第2代藩主として名君と呼ばれ、その財力で「大日本史」の編纂という大事業の創始した人物。実際には関東をほぼ出なかったといわれる。

若い頃は血気盛んな傾奇者で辻斬りで人を殺めることもあった。跡取りの器かどうか試す過酷な試練を与えてくる父との確執、文事(詩歌、学問)で天下を取りたいという熱い思い。好々爺などではなく猛虎を内に秘めたような男であったという新しい光圀イメージを確立させた。

宮本武蔵、山鹿素行、保科正行など歴史上の有名人たちが次々に登場して光圀の人生に絡む。「天地明察」の主人公安井算哲も、もちろんでてくる。光圀の立場から算哲と面談するシーンがあって楽しい。日本人としてラーメンをはじめて食べるシーンも。史実を重視していながらも、ドラマチックだ。よくこれだけのピースを破綻なく収められるなと小説家の手腕に驚かされる。光圀が文事の師として仰いだ後水尾院は、7つ×7つの詩歌を縦横に並べて、どこから読んでも意味が通る作品(蜘蛛手の歌)を作ったというが、まさにこの作品自体が蜘蛛手の歌と讃えていいのではないか。素晴らしい完成度。

個人的には左近萌えである。光圀は妻に先立たれ後妻をとらなかったが侍女の左近というツンデレ美女が、光圀を支える。たぶん、この左近はライトノベル出身の著者ならではのキャラクター創作だと思うが、映画化、ドラマ化された際の私の一番の注目は、この左近を誰が演じるかだというくらい、左近がいい(笑)。

光圀伝オフィシャルサイト
http://www.kadokawa.co.jp/mitsukuniden/

天地明察
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/06/post-1240.html
先日天地明察の映画を観てきた。あれだけ長い話を2時間にまとめるのは大変なわけでずいぶんはしょられていた。特に最初の妻とのエピソードを省いてしまったから、算哲とえんの二人がやっと結ばれました感が少し弱まっちゃったのが残念ではないかな。しかし一般向けにこの時代の天文ロマンを紹介する作品としてはよくできていたと思う。宮崎あおいは映画でまくりだが常に良妻賢母。別の役割も見てみたいものだが。

映画天地明察
http://www.tenchi-meisatsu.jp/index.html

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このページは、daiyaが2012年10月30日 23:59に書いたブログ記事です。

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