藤子・F・不二雄大全集 UTOPIA 最後の世界大戦/天使の玉ちゃん
・藤子・F・不二雄大全集 UTOPIA 最後の世界大戦/天使の玉ちゃん
これまで本屋で入手可能な『UTOPIA』はこれとは別の版もあったが3,990円と高かった(ちなみに初版の鶴書房版は数百万円の値が付く)。全集の最終巻として出たことで、ぐっと廉価になった。藤子不二雄の単行本デビュー作『UTOPIA 最後の世界大戦』と、高校3年生のときのういういしい連載デビュー作『天使の玉ちゃん』が収録されている。日本の漫画史に興味がある人は必読の作品だろう。
『UTOPIA 最後の世界大戦』。1953年に足塚不二雄という名義で発表された。科学技術の暴走や、人間性を搾取する管理社会への抵抗というメッセージ性が強く感じられる。流線型の未来都市デザインとともに、手塚治虫の強い影響を受けていることがよくわかる(鉄腕アトムの連載は1952年~)。当時の二人がやりとりしたメモも公開されている。
『UTOPIA 最後の世界大戦』には、女性のキャラクターがひとりもでてこないという指摘があり、そういえば藤子不二雄の漫画って、その後の作品を見ても、しずかちゃん的な記号的な女性が多いが、生々しい女性はでてこない気がする。原点からして女性は苦手な作家だったといえるのかも。だからこそ少年漫画で成功したのだろう。
少し冗長なストーリーや、キャラクターの描き分けが不完全であるなど、処女作の持つ欠点はあるが、一枚絵として鑑賞できそうな未来の未来風景、時代を感じさせるカラーページなど価値ある一冊。
・藤子・F・不二雄大全集 SF・異色短編 1
http://www.ringolab.com/note/daiya/2012/08/f-sf-1.html
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