ニコニコ学会βを研究してみた
2011年12月に開催された「野生の研究者」たちによる第1回ニコニコ学会βシンポジウムの記録。
野生の研究者とは「これは職業としての研究者ではない人を意味する。しかしもともと研究者とは、職業というよりも生き方であり、常に探究心を忘れずにいる人を意味する言葉であるはずだ。そこで、プロ・アマという区分を無視し、生き方としての研究者を選んでいる人を「野生の研究者と呼ぶことにした。」という意味。学会に所属したり、論文を書いたりしなくても、趣味や仕事で実験や研究をしている人なら誰でも参加できるのがニコニコ学会。
職業研究者というのは、学会が設立されている既存分野において、先行研究をすべて調べた上で、まだ誰もやっていない部分を補完する人たちだ。人気分野ではまだ誰もやっていないことというのはそうそうないから、研究内容も自然と、隙間を埋めるような面白みがないものになりがちだ(そうして隙間が埋まっていくことが通常の科学では重要なのであるが)。そこへいくと既存の枠組みを取っ払って自分たちのやりたいことを無邪気に研究しまくる野生の研究者たちの仕事は面白いものばかり。
5人の研究者が20件ずつ(1研究1分)で発表する「研究100連発」や公募25人による3分間発表「研究してみたマッドネス」という形でたくさんの研究が紹介されている。食べると音が変化するフォーク型楽器「食べテルミン」、ネコの視点でライフログ「CAT@Log」、クリスマスをキャンセルするクリスマスキャンセラー、書道のN次創作を可能にする「サンプリング書道」、エラーやタイプミスを好意的に解釈するプログラミング言語など、出てくるのはどこまで本気かわからないが、身を乗り出して聞きたくなるプレゼンの連発。シンポジウムで大賞をとったのは人型ロボットのための統合操縦ソフト「V-Sido」だった。
なお、これはイベントの記録というだけではなくリーダーの江渡浩一郎さんをはじめ、ドワンゴの川上さん、チームラボの猪子さん、日本技芸の濱野さん、クリプトンの伊藤さん、東大の歴本さん、SF作家の野尻さん、メディアアーチストの八谷さん、ARGの岡本さんなど、キーマンたちののインタビューや寄稿も収録されている。本としての価値も十分。
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