国民の修身
修身に学べ。渡部昇一監修。戦前の修身の教科書を再現。教育勅語も収録。祖国を大切に。思いやりをもとう。正直に生きよう。家族を大切にしよう。礼儀を守ろう。我慢強くなろう。時代を感じる挿絵とカタカナで書かれた文字で、修身の授業の雰囲気をそのまま味わえる。(カタカナで長文は読みにくいのでちゃんと現代の文章版も収録されている)
正直を教えるページでは、
「ある呉服屋に、正直な丁稚がありました。ある時客の買おうとした反物に傷があることを知らせたので、客は買うのをやめて帰りました。主人は大層腹を立て、すぐに丁稚の父を呼んで「この子は自分の店では使えない。」と言いました。父は自分のしたことはほめてよいと思い、連れて帰って他の店に奉公させました。この子はその後も正直であったので、大人になってから立派な商人になりました。それにひきかえて、先の呉服屋はだんだん衰えました。」
などという題材が挙がっている。子供に考えさせる要素と解説する箇所がうまく設計されている。
いや、ま、よいこと言っているのではありますが、時代が時代なのでテンノウヘイカバンザイで始まるのが修身。身を捨てて死んだ軍人の話も美化されている。戦争をはじめたのもこれらの思想であり。敢えて道徳教育を強く教える時代というのはあまりよくない時代なのかもしれないとも思った。
「欧米は道徳教育は主として教会がやることになっていたが、日本では宗派・学説・洋の東西・時の古今を問わず、万人が認める徳目を学校が教えることにしたものであった。」
とあるが現代日本において道徳というのがなじみにくいのは、宗教というベースを日本人が共有していないからだろう。
資料としては面白い本。増刷でている。産経新聞出版。
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