説得ゲーム
『スキエンティア』がよかった戸田誠二の近未来SF短編集。
画期的な新技術で人々の生活や考え方が大きく変わった近未来社会を描く。
仮想キャラクターの自殺志願OLや売春しようとする中学生を説得して、それをやめさせることができたら勝ちという説得ゲーム。現代でも、異性を口説く恋愛シミュレーションゲームは人気だが、まだ人工知能部分は稚拙である。大人はそれほどのめりこめないが新作がでるたび、技術が進化している様子はわかる。いずれプレイヤーが仮想キャラと心中するような事件でも起きたら本物ということかもしれない。
おそらく本物と見分けがつかない仮想キャラは、本物の人間からデータをとってつくるものになる。現実の人間の動作をセンサーでデータ化して、CG映像に活かすモーションキャプチャーのように、実在の人間のコミュニケーションログや脳の動きを分析してつくるということになるだろう。
感情移入を伴うコミュニケーションをした後、相手が本物ではなかった、人工知能の仮想キャラだったと明かされると我々は憤りを感じるが、逆に仮想キャラだと思っていたキャラクターが実は本物だったとなるとどう感じるものなのだろう。『説得ゲーム』そんなテーマの話。
ほかに脳研究者が自殺した女性の脳を培養する話『キオリ』、全身麻痺した患者の脳を、脳死した別の患者の身体に移植する『NOBODY』、もしも男がこどもを産めるようになったらという設定の『クバード・シンドローム』など5作品を収録。
・スキエンティア
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/02/post-1166.html
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