四丁目の夕日
『三丁目の夕日』みたいな古き良き昭和を舞台に、まじめに生きているのに不幸のどん底へ落ちていく青年の姿を描いたブラックな漫画作品。山野 一作。プロレタリアートの悲哀を極端なかたちで描いている。
零細の印刷工場。中卒の父親は経営者として必死に働いて、子供たちを大学に進ませることを楽しみにしている。主人公の長男も頑張って学校では優等生になった。ところが、この一家につぎつぎに不幸が訪れる。母親のガス爆発事故で入院し、その治療費のために借金まみれとなった父も事故で無くなってしまう。みるみるうちに借金取りに追われ、親類からも見放され、不良たちにも絡まれて傷だらけになる主人公。
絶望のどん底から這い上がろうとする主人公の努力はことごとく裏切られ、不幸のアリ地獄へと引きずり込まれていき悲惨なカタストロフへまっさかさまに落ちていく。路頭に迷うどころじゃない。その一方でかつての高校同級生で財閥の御曹司の友人は、たいした努力もしないのに、悠々とした人生を送っていく様子が描かれる。このコントラストが悲惨さをさらに演出する。
かなりマニアック、サブカル的、シュールでブラックな衝撃的ラスト、河内十人斬りみたいな、ルサンンチマンの大暴発もあり。相当読む人を選ぶが、よく描けていると思う。
・三丁目の猟奇
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/01/post-1376.html
映画『三丁目の夕日』の舞台、昭和30年代の高度経済成長に入った日本。貧しいけれども希望に満ちた時代であったというイメージがあるが、実は経済成長の陰では、猟奇的な事件もいっぱいあったのだという事実を教えてくれる漫画。
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