まほろ駅前多田便利軒
第135回直木賞受賞作。
三十代半ばで便利屋を営む多田のもとに、十数年ぶりに再会した高校時代の友人の行天が一文無しで転がり込んでくる。同居しつつも一定の距離を保ち、仲が良いのか悪いのか微妙な関係の二人が、便利屋に持ち込まれる、さまざまな依頼をこなしていく。やっかいごとの背景にある複雑な人間模様がみえてくる。物語よりもキャラの味わいが売りのキャラクター小説だ。漫画化、映画化もされている。
この作品は楽天Koboでも読んだ。電子ブックストアには芥川賞・直木賞受賞作品という特集コーナーがあるが、クリックするとまだ6冊しかない。いくらなんでも品ぞろえが悪いのだが、いつもだったら選ばない本を読む機会になる、とポジティブに考えて選んだのがこの有名な作品だった。電子書籍として、軽めの短編連作集はとても読みやすいし。
8本の連作。犯罪はあるが猟奇的な殺人とかひどい暴力は出てこない。二人の男の奇妙な友情、その愉快な仲間たちの関係が主題であり、ミステリタッチでありながら、どちらかというと心温まるオチを指向している。男と女がいっぱい出てくるが、みんな総じて中性的。どろどろしない。便利屋という職業がなんだか昭和的でもある。女性作家が書いた男の奇妙な友情はあまり真実味がないが、ファンタジーとしては楽しい。世界観にはまると次の話が読みたくなる。
続編も出ているが、こういう作品こそ電子書籍的には1話100円でバラ売りにしたらよいと思う。バラ売りにすると一話ごとで売上げ、人気もわかるから、読者に何が受けているのか作家にも明確になる。そうするとフィードバックを受けながら、ストーリーを変えていく作家も出てくるだろう。テレビの視聴率をみながらつくるドラマみたいなもの。それが文学にとってよいか悪いかわからないが、映画化や漫画化を指向しているこういう作品は向いているように思った。
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