商店街はなぜ滅びるのか 社会・政治・経済史から探る再生の道

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・商店街はなぜ滅びるのか 社会・政治・経済史から探る再生の道
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商店街は歴史的には新しい存在なのだそうだ。20世紀初頭の都市化、近代化の流れで農村を出た多くの若者たちは、町に出て被雇用者となるか、零細規模の小売商店主となった。ほとんどの商店街は昭和の発足なのだ。中世に発祥を持つというのは俗説であり、その歴史の浅さゆえに弱点があったという。

疑似血縁組織のイエをベースとしたかつての伝統的な商家と違って、商店街の家業は近代家族制度をベースとした。家族という閉じたなかで事業が行われたために、跡継ぎがいないと、1,2世代で終わってしまうのが宿命だったのだ。

当初の商店街の理念とは、

1 百貨店における近代的な消費空間と娯楽性
2 協同組合における協同主義
3 公設市場における小売の公共性

で、規模を拡大することで資本力と専門性を高める戦略であった。これは数十年間はうまく機能した。だが、スーパーマーケットやショッピングモール、そしてコンビニの登場により消費空間としての魅力が低下したこと、世代交代不能による事業継続問題が続出したことで、いまや各地で存続の危機に陥っている。

近代家族制度と日本型政治システムが商店街という独特の商業形態、消費空間を生み出したというもので、著者はその弱さを指摘すると同時に、「地域社会の消費空間は、けっして経済的合理性だけで判断されるべきものではない。」。古き良き価値を残すためにはどのような政策が求められているかを提案する。

商店街というものが法人格を持っているとか、どんなふうに運営されているかといった基本的な事柄を私は知らなかったので、とても勉強になる本だった。ちょうど私が住んでいる藤沢に、全国でも稀な商店街の新規設立があって、地域の話題になっている。若い人中心で新しい商店街の可能性を探るという面白そうな試みだがこういう分析の本の知見を踏まえて長く続くものになってほしいなあ。

逆風の中で新商店街、藤沢駅近くに若手経営者ら設立へ/神奈川
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120506-00000016-kana-l14
「県内の商店街は、1990年の1048団体をピークに、現在は約700団体まで減少。近接地に大規模商業施設ができたり、後継者不足などで閉店が相次ぎ、商店街の維持が難しくなるケースが多い。商店街の新規登録は年に数件で、それも既存組織が体制を見直す場合などが大半という。」

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