楽園のカンヴァス
和製『ダ・ヴィンチ・コード』と呼んでよさそうな美術作品の謎をめぐる上質なミステリー。
大原美術館で監視員を務める早川織絵は、毎日、静かな館内に立ち、観客が作品に触れないように何時間も展示作品を見張っている。ある日、一介の監視員であるはずの織絵は、あったこともなかった館長に突然呼び出される。ニューヨーク近代美術館の有名キュレーター ティムブラウンが、日本で開催するルソー展の絵画貸出にあたって、織絵を担当にするように指名してきたという。織江にはかつてソルボンヌ大学で最年少で美術の博士号をとり、斬新な研究論文で学会を賑わせた天才研究者という隠した過去があったのだった。
20年前、織江とティムは、伝説の美術コレクターから、秘蔵作品の真贋鑑定を依頼された。7日間、スイスの富豪の館に泊まり込み、互いのキャリアをかけて直接対決をする。ルソーに関する未発表の重要資料を、毎日1章ずつ読み、アンリ・ルソーの『夢』そっくりの『夢を見た』の真贋を最終日に結論するというのが対決のルール。20世紀の美術史に秘められた謎を二人はその豊富な美術知識を使って解いていく。
『ダ・ヴィンチ・コード』と比べると、主題となる絵画も、館に閉じこもった展開も地味なのだけれど、ドタバタがない分、落ち着いて美術作品をめぐる知的な謎解きを楽しめてよかった。
山本周五郎賞受賞作。
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