Habibi [日本語版] [大型本]
近年まれにみる傑作。アラビアンナイトの如く妖艶で純粋で煌びやか、そして力強い生命賛歌もありで、これまで味わったことがない漫画表現にクラクラきた。読後にスタンディングオベーションを送りたい気分になった。
大型本700ページ(2巻組)の米国発グラフィックノベル大作。ニューズウィーク誌「2011年度 絶対読むべき本10冊」、米国Amazonでランキング1位など、世界で絶賛されている作品が遂に日本語化された。
Habibiとはアラビア語で「私の最愛の人」という意味。
物語の舞台はいつの時代かわからないイスラムの王国。親に売り飛ばされた挙句、奴隷商人に捕まった9歳の美少女ドドラは、市場で出会った3歳の幼い黒人奴隷ザムをつれて、砂漠へ逃げる。
砂漠に埋もれた難破船で二人は母親と息子として暮らす。ドドラはときどき通りかかる旅の隊商を相手にひそかに売春をして生計を立てる。二人だけの静かな生活が何年も続くが、やがて思春期を迎えたザムはドドラに対して欲望を抱き始める。そしてザムは、母親のドドラがどうやって自分たちの生活に必要な食べ物を得ていたかの秘密を知ってしまう。
そして事件が起きて二人の蜜月は突然に終わりを迎える。ドドラは王宮のハーレムへ、ザムは厳しい流浪の旅へと向かい、二人の道は遠く離れていく。第一巻はドドラの物語、第二巻はザムの物語が主体。別れた二人の人生がやがて最愛の人を求める強い思いによって、またひとつになるまでの長い長い波乱万丈のドラマ。
エキゾチックさが最大の魅力だ。
イスラム教のコーランやユダヤ教の旧約聖書の説話×アラビア語の文字のカリグラフィー芸術×手塚治虫のマンガ的に苦悩する主人公×アメコミの表現手法など異種の文化が見事に融合している。みたこともない世界観をつくりだした。
コーランも、アメコミも、手塚漫画も、それぞれが豊かな世界観をもったホンモノなわけで、リミックスっていうことでもあるけれども、異文化の深いレベルでそういうことをやると、エキゾなすごいのがでてくる。異文化の底知れぬ深さをどう創造に利用するかが現代クリエイティブのテーマだなと感じた。
●アメリカでAmazonのベストブック第一位(2011年10月)
●「漫画界のアカデミー賞」アイズナー賞2012年ノミネート
●ニューズウィーク誌「2011年度 絶対読むべき本10冊」
など国際的に評価されている。
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