昭和一代女 カラー完全版
梶原一騎 原作、上村一夫 絵という二大巨匠のコラボ。昭和の劇画の傑作。
昭和18年。反骨の新人評論家と柳橋の名妓の間に生まれた鷹野翔子。戦争の時代は反国家的な言論を許さず父親は特高警察に追われる身となる。逃げた夫をかばった母は、憲兵に陰惨な拷問にかけられて身体を壊し、空襲の夜、翔子の目の前で血を吐いて死ぬ。ひとりぼっちとなった少女は終戦の混迷を生き抜くため汚濁の奈落に身を落としていく。
特高警察による拷問や、娼婦仲間の制裁、女子教護院でのリンチ.....女を裸に剥いての過激なバイオレンスシーンが多いのは、梶原一騎のノリなのだろう。上村一夫の陰影の深い絵がそうしたシーンに妖しいエロティシズムを醸し出す。この組み合わせはの相乗効果がかなり強烈。
しかし、物語がしっかりしているので暴力とエロの低俗漫画には堕ちず、良質の文学作品のような厚みのあるドラマに仕上がっている。汚れた泥の中でも清廉に咲く蓮の花のように、翔子はどんな底辺不遇に身を落としても、任侠的に一本筋を通して、自分を見失わないで生きていく。何度も何度も繰り返される試練をくぐりぬけて、翔子が凛とした大人の女に成長していくプロセスが感動的。
最近の漫画では絶対に体験できない昭和ロマンの世界にどっぷり浸れる。
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