怪談―小泉八雲怪奇短編集 怪談
明治時代、米国から日本にやってきたジャーナリスト小泉八雲の書いた『怪談』。オリジナルは日本の民話や中国の説話をもとに『KWAIDAN』として海外の読者のために英語で書かれたものだった。『耳なし芳一』『ろくろ首』『雪女』など私たちが知る怪談の多くの傑作バージョンが19本読める。ただの怖い話、不思議な話というだけでなく、独特の詩情を漂わせている八雲の文章は、翻訳を通しても味わい深い。
八雲を読んだのは、現代作家が書いたこちらの『怪談』を読むための予習だった。雪女、ろくろ首、むじな、食人鬼、鏡と鐘、耳なし芳一の6本が、現代の話として、おもいっきり大胆に換骨奪胎されて、語りなおされている。
たとえば現代の耳なし芳一は、インディーズバンド「鬼火」のボーカリストだ。琵琶法師がシンガーで、琵琶がギターで、身体中に書いたお経が、顔に塗るペイントという対応になっている。ほかに雪女はコンパニオンのゆきちゃんで、食人鬼は人肉食の噂のあるシェフというように現代の都市における怪談に置き換えられている。
八雲の詩情というものはないのだが、フジテレビの『世にも奇妙な物語』を観ているような楽しさがある。
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