越境者的ニッポン
職業は博奕打ち。経歴が凄い。高校にはほとんど行かず賭場に出入りし父親ほどの年齢の親父たちを相手に勝負した。21歳の時、1万円の原資で競輪に挑み、勝った金を次のレースに全額突っ込むという乱暴な戦法で3連勝し、300万円を稼いでしまう。新卒の月給が2万円の時代にだ。大金を持った著者はそのまま海外へでて国際的な博奕打ちとなった。以来40年ほとんど日本には住んでいない。現在はオーストラリアを拠点に世界の賭場を攻めている。
著者は中学3年生レベルの知識しか持たない人間として「チューサン階級」を自称している。アウトローの立場からの豪放磊落な語りを楽しむ本なのだが、途中で子育ての話が書いてある。子供も父親と同じように、集団生活になじめず登校拒否になる。だが、オーストラリアで、個性を伸ばす環境を与えると、子供は一流大学に十五歳で飛び級入学する。ここから私はすっかり教育論として、態度を改めて真面目に読むことにした。
「ある年齢を過ぎると、絶対的知識量が不足している子どもたちは、全体主義者となる。他の子どもがやることをやりたがり、同じ物を持ちたがり食べたがり、同じテレビ番組を見たがる。これに関しては、いくらでも例が挙げられるはずだ。 放っておけば全体主義者となってしまう子どもたちを、言葉は悪いかもしれないが、社会を社会たらしめる論理ですこしずつ「矯正」していくのが、教育の重大な役割のひとつではなかろうか、とわたしは考える。」
子供を型にはめるのではなく、個性を伸ばして育てる。そうすることが社会のためでもあるという論。ひとりひとりを異質な人間に育てる。フリーという名のゲイの中学教師が、問題児であった著者の息子に「きみはきみのままでいい」と言って導く教育。日本の普通の学校では不可能な話に思える。
越境者の目から日本を憂う。確信犯としての素朴な視点で、日本の政治やメディア、教育、文化をぶった切る。とらわれるものがないグローバルレベルの自由人による痛快な放談。ここがヘンだよ日本人論。
トラックバック(0)
このブログ記事を参照しているブログ一覧: 越境者的ニッポン
このブログ記事に対するトラックバックURL: http://www.ringolab.com/mt/mt-tb.cgi/3612