福島第一原発 ―真相と展望
政府が"冷温停止"を発表した福島第一原発が、現実にはまだまだ危険な状態にあることを、米国の原子炉設計の専門家アーニー・ガンダーセンが語る。再び大きな地震に見舞われて、四号機の使用済み核燃料プールが崩壊したら東京も危ない、即座に逃げよ、という。
「大気圏内で行われた歴代の核実験で放出された量を合わせたほどの放射性セシウムが、四号機のプールには眠っています。原子炉は原子爆弾よりはるかにたくさんの放射能を抱えているのです。四号機の使用済み核燃料プールは、今でも日本列島を物理的に分断する力を秘めています。」
そして四号機倒壊はないにしても、廃炉へ向かう作業にも大きなリスクがあることを指摘している。
「核燃料を取り出すためには、必要な技術を開発して作業に着手するまでに10年を、実行するのに10年ほどかかるのではないでしょうか。三基に溶け落ちた核燃料の塊が二つずつ、そして使用済み燃料プールが四つあります。放射線量が非常に高い溶融した核燃料が少なくとも二十年間も建物に残っているのです。」
1から3号機だけで257トンのウランがあり、格納容器の35メートル下の底部に溶融している。これを水没させたうえで、巨大クレーンを設置して、50回くらいにわけて取り出す。一度でも取り落とすことがあれば大惨事につながる。10年くらいは大汚染の可能性がゼロにならない。
事故から1年が経過してメディア上では、福島第一原発は淡々と後片付けをしているような印象になっているが、緊張を解くには早すぎるということがこの本でよくわかる。四号機倒壊時のマニュアルだとか避難訓練こそやっておくべきだろう。
それから、今回、避難勧告の範囲の設定が失敗した要因として、日本人の土地への愛着を挙げている。アメリカ人の大半は生まれた町で暮らしていないので、引っ越しへの抵抗がないが、日本人はこだわる。だから科学的な観点からは居住に適さない地域に住民を戻しかねないと懸念を表明している。海外から客観的な視点で語られているのがよかった。
その他のこの本の主張
・三号機は水素爆発ではなく即発臨界
・チェルノブイリを超える放射性物質の放出量
・数年後に深刻に健康被害があらわれる可能性
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