グーグル化の見えざる代償 ウェブ・書籍・知識・記憶の変容
なんでもかんでもグーグルまかせの危険性を語った一冊。
特に「選択アーキテクチャー」の問題は重大だと思った。行動経済学の研究では、ユーザーに与えられた選択と序列が、その意思決定に極めて重大な影響を与えることが、さまざまな人間の行動において明らかになってきている。
自由意思を尊重しているようにみえるシステムでも、人々の行動は初期設定に大きく左右される。基本メニューに何が入っているかとか、初期設定オプションがオンなのかオフなのか、検索したときに何が最初に表示されるか。こういったことが、人々の政治、社会、経済の意思決定に強く影響する。
グーグルでさまざまな意思決定のための情報を探す。グーグルのインフラ上でビジネスをする。グーグルで政治について調べる。なんでもグーグル任せになりつつある私たちは、グーグルのデフォルト設定の支配力に対して、もっと意識的でなければならないというのが本書の主張だ。「中立的設計」などありえないのだから。
「私たちは検索システムに積極的かつ意図的に影響──規制さえも──をおよぼすべきであり、そうすることで、知識を配信するウェブのやり方について責任を負うべきだというのが、本書の主張である。私たちは、有力な一企業──どんなに素晴らしい企業であっても──短期的な利益をもたらすのではなく、長期にわたって全世界に利益をもたらすような、一種のオンライン生態系を構築しなければならない。」と著者は語る。
将来的に世界にとってグーグルは大きな脅威になるかもしれない。フラットなネットワーク社会でヒトラーのような独裁者が力を持つことは考えにくいが、情報インフラを握ることで、グーグルが民主政を実質支配してしまうことは十分に考えられる。人々の投票行動や、コミュニケーション、評価評判といった民主制において重要な要素を制御できてしまうわけだから。グーグル化の代償はとてつもなく大きくなる可能性がある。
すべてグーグル任せというスタイルは避けるべきなのかもなあと、グーグルどっぷりの私は素直に思った。しかし結局、他のサービスを使っていても、グーグルに買収統合されてしまったりするのだよね。
・実践 行動経済学 健康、富、幸福への聡明な選択
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/11/post-1114.html
選択アーキテクチャーについての本。
・閉じこもるインターネット――グーグル・パーソナライズ・民主主義
http://www.ringolab.com/note/daiya/2012/03/post-1613.html
同じくグーグルの影響について語っている本。
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