ざっくりわかる宇宙論
前半はコペルニクス、ガリレオからアインシュタインまでの古典的宇宙論、後半は超ひも理論、ブレーン宇宙までの現代の宇宙論。数式はなしで、科学好きの一般読者のために書かれた入門書。
ビッグバンは宇宙のはじまりではなく、その前には量子宇宙があり、インフレーションが起きてビッグバンに至ったというのが定説になろうとしている。量子宇宙のはじまりにおいては時間が存在しないので、その「前」はない。こんな風に宇宙のはじまりを明解に説明してくれる。
著者は古典的宇宙論から現代の宇宙論への流れを「モノからコトへ」ととらえている。
「思想という側面から忘れてはならないのが、モノからコトへ、という大きな流れでしょう。コペルニクスの「天球」にあらわれているようなモノとしての時空は、まるで触って固さを確かめられそうな気がします。それに対して、光でさえ曲げてしまう、時空のゆがみというアインシュタインの発想は、完全にコト的だといえるでしょう。」
宇宙論は数学であると同時にほとんど哲学である。特に現代宇宙論はコトばかりで話が進んでいく。運がよけえれば何十年もしてからモノとして検証される。そしてコトの想像力の次元はどんどん高くなっていく。超ひもやブレーン(膜)理論は、その命名からして、ひもや膜というモノとしてとらえようという意図があるわけだが、その正体はメタファーではとらえきれない高次の概念である。だからこそ、本書みたいに、ざっくりわかる解説は大切だ。
「この宇宙にたくさんあるブラックホールが、じつは、すべて小さな宇宙の始まりではないか?」「ブラックホールを裏側から見ると、それはどんどん広がっていく宇宙なのではないか」という仮説が紹介されていた。実は超ひももブラックホールだという学者もいるらしい。私の子供時代にはなんでも飲み込んでしまう大穴として、閑話休題的に教えられた存在が、実は宇宙の本質かもしれないということになっている。20年とか30年で宇宙論は書き換えられていく。おもいのほか動きが速い。
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