超常現象の科学 なぜ人は幽霊が見えるのか
幽霊、占い師、幽体離脱、念力と超能力、予知夢と予言者。ニュースになった"超常現象"を最先端科学で解き明かす。著者は超常現象は全部嘘というスタンス。科学でトリックを説明できるという本。そして、各章でトリックを解き明かすと同時に、「あなたにもできるスプーン投げ」のように、誰にでも実際にできるやり方を示している。
驚くようなトリックというのはほとんどなくて、たとえばスプーン投げは折れる寸前まで曲げた「応力のかかったスプーン」を用意して隠し持っておく。いかに観客にこれを意識させないかがすべてのポイントになる。
ほとんどの超常現象に共通するのは錯覚だ。脳は環境の中で最も重要と思われる事柄を選び集中する。その他の事柄にはほとんど注意が払われない。詐欺師たちはこの脳の性質を利用して、見るものを欺く。
人間の脳のはたらきを知っていると思考さえ操ることができる。こんな実験があった。
「ウェグナーは、白クマが大好きな人だった。もっと正確に言えば、クマのことを考えないでくれと人に頼むのが好きな人だった。彼は有名な一連の実験で、参加者に白クマのことを考えないように頼み、現れてほしくないクマが頭の中に侵入してきたら、その都度ベルを鳴らしてもらった。すると、被験者たちは頭の中からクマの姿を消し去るのに驚くほど苦労し、数秒おきにベルが鳴ることも多かった。」
考えるなと言われると人はそのことばかり考えるようになる。
白いシーツを被った典型的な幽霊の格好をして夜の公園に出没するとどうなるかを試した実験もあった。こちらでは逆にほとんどの幽霊が発見してもらえなかった。人はなかなか幽霊には気がつかないのだ。だがここには幽霊がでるという暗示をかけると人は簡単に幽霊を見てしまう。任意の何かを考えさせたり、あるいは気がつかなくさせることは、脳の仕組みを知っていると、割合、容易にできてしまうことのようだ。
超常現象というよりも認知科学に興味のある人向けの科学読み物。手品の数々が披露されているのでこれを人に試してみるのも面白そうだ。
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