恍惚

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・恍惚
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異なる時代の女たちの官能をテーマにした坂東 眞砂子の連作短編集。

「海は未知への扉であり、山々には精霊が宿っていた太古・弥生時代。男の心に狂おしい愛情の念を残しながら、魂が肉体を離れ飛び去って行く女の哀しみを描く「緑の女の還る地は」、室町時代に山城国の有力領主に嫁いだ誇り高き女と、京の遊里で名をなした女が都で儚き運命を交差させ、性を開花し散って行く「乱の徒花」、江戸を訪れた阿蘭陀(オランダ)商人に性の悦びを教えられ身も心も崩壊する町女を描く「伽羅の魔」...他4編。」
時代の幅が広い。弥生、鎌倉、室町、江戸、昭和、平成と時代順に並んでいて特に古い時代の作品が幻想的で良かった。

山々に精霊が宿っていた弥生時代。海賊の黒魔蜂が倭国の平和な村を襲い、「緑の女」たちを連れ去っていく。村に住む若い男の兎足は、思い人の若菜を賊に奪われる。『緑の女の還る地は』。大陸から波状的に人々が日本に押し寄せてきた頃というのはおそらく、こんなドラマがあったんじゃないかと思わせる。

この作品は当初、梟森南溟という筆名で出版された。当時の坂東 眞砂子のパートナーのフランス人との共作だったそうだが、「共作というのは二人でテーマについて話し合い、だいたいの路線が決まると、ミッシェルがエロティックな描写部分を英語で書き、私がそれをできるだけ忠実に日本語に翻訳し、さらに物語としての形を整えていった」という。どことなくエキゾチックな感じがあるのは外国人の感性が混じったからかもしれない。

・くちぬい
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/10/post-1530.html

・異国の迷路
http://www.ringolab.com/note/daiya/2006/06/post-394.html

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このページは、daiyaが2012年3月12日 23:59に書いたブログ記事です。

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