ヒューマン なぜヒトは人間になれたのか
NHKの同名の番組がとても素晴らしかった。全4回で人間が人間的である理由について探究するドキュメンタリ。考古学・人類学・動物学・脳科学・心理学などの最新成果を総合して、人間性や社会性の起源を明らかにしていく内容だった。近日DVDでも出るだろう。
・ヒューマン なぜヒトは人間になれたのか
http://www.nhk.or.jp/special/onair/human.html
これはその書籍版。4部構成の番組の流れはほぼそのままに、研究の詳細、取材過程でのエピソードを加えて、文字で深く知ることができる内容になっている。
脳の進化が心の進化につながり、心の進化が社会の進化へと影響を及ぼしていく。キーワードは交換、飛び道具、農業、貨幣。どれも人間にしか見られない事象であり、複雑な心が発達していないと成立しないものであるということを、毎回、少し意外な展開を交えて明らかにしていくプロセスが面白い。
人間社会の複雑さは心の複雑さの反映なのだ。研究によるとチンパンジーにも喜怒哀楽があるが、うらむ、ねたむ、恥じる、ひがむ、のろうといった自他の差の認識に起因する感情はないのだそうだ。人間はやたらと自分と他者の違いに対し感受性が強い。良い面も悪い面も屈折する心から生じている。
ちょっと意外だったのが信頼に基づく協力の起源である。人類の狩猟採集時代は平等な社会であり、分かち合いが当然である時代が何万年もあったらしい。原始時代というと弱肉強食をイメージしてしまうが、逆であり、助け合わなければ非力な人間は生きていくことがままならなかったのだ。農業が発達し、富の畜性が始まり、貨幣制度ができたからこそ、利己的な人間が存在できるようになった。人間と言うのは本来的には人間的なのだ。進化することで非人間的になってしまったのだ。
衣食足りて礼を知るという言葉は疑ってみる必要がる言葉なのかもしれないなと、この番組を見ていて思った。
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