世界の運命 - 激動の現代を読む
米イェール大学歴史学部教授で『大国の興亡』などの著書で知られるポール・ケネディのエッセイ集。
「偉大な指導者は歴史を作るのか、時流に乗っただけなのか」
「地球規模の繁栄に必要なのは正統性と言語と位置である」
「石油と食糧の交換取引に新たな展開も?」
ここ数年に書かれた数ページのエッセイが36本収録されている。国際関係を歴史学の観点から読み解くというのが全体としてのテーマだ。国際時事ニュースの見方が変わるヒントが多数盛り込まれている。
数字から入るネタが特によかった。
たとえばパレスチナでは異常な高出生率が続いており若いアラブ人が激増している。彼らには仕事がなく欲求不満に陥っている。イスラエルの武力にはかなわなくても数の上では圧倒しつつある。この数字はアラブ地域が不可避的に動乱期へ向かうことを示しているという(「数字が物を言う時代」)。国の力を領土の広さと人口と耕地面積の関係から分析したり(「領土と力 常に大きいほど良いわけではない」)
国際関係と言うと複雑な要因が絡み合っていると考えがちだが、賢者はシンプルに考える。公開されている、基本的な数字や事実を見れば、おおまかな未来の予測は可能なのだろうと思わせる。
真面目な大先生的口調が基本だが、冬季オリンピックのメダル数が寒い国に偏っていることに対して、バランスをとるため「ラクダ競走」とか「真珠採りダイビング」とか「長距離唾液飛ばし」なども競技化してはどうかと提案する「なぜ雪国だけに楽しませておくのか」のようなおちゃめな一面もある。
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